第96話幕間 従兄弟
クエストがひと段落したので、新太は一旦ゲームからログアウトした。
休憩である。
「…………ふぅ」
座っていた椅子から立ち上がり、体を軽く動かす。
それから、時計を確認した。
午後三時。
夕食までにはまだまだ時間がある。
次に、本棚を見た。
視界にまっさきに飛び込んできたのは、【雨月物語】だ。
休憩がてら、読もうかと思い手を伸ばした時だ。
携帯端末がメッセージが届いたことを知らせてきた。
メッセージの送り主は、従兄弟である。
それも、親戚の中では唯一無二と言ってもいいほど、新太と話が合う存在だ。
この従兄弟は下手すると新太よりも本が好きな、本狂いである。
新太のように、本に熱中するがあまり食事を疎かにして倒れたことは、それこそ両手両足の指の数では足りない。
さらに、小学校の頃から図書室に入り浸り、夢中で読書をしていて丸一日授業をサボったこともあると聞いた。
紙も電子書籍も関係なく読み漁っている。
それこそ、伯母の形見である本を新太とジャンケンして取り合うことも度々だ。
最後にメッセージのやり取りをした時は、読書用の端末を風呂で使って壊したと言っていた。
しばらく読書は、紙の書籍の積読消化にあてるとも言っていた。
(そういや、クリスティは読み終わったんかな?)
年齢は、新太と同年代の高校生だ。
最近は新太がゲームを始めたこともあり、さらに相手は相手で新しい友人ができたとかで疎遠になっていた。
それまでは、時折オススメ本や読んだ本の感想などをメッセージで送りあう程度の付き合いをしていたのである。
そのため、新太はもしやオススメ本か小説作品の感想かと思った。
なんの抵抗もなく、メッセージの中身を確認する。
そこには、地元の古本市に一緒に行かないか、というお誘いのメッセージがあった。
断る理由も無いので、一緒に行こうと返信した。
すると、さらにメッセージが返ってきた。
メッセージを読み上げる。
「友達を連れてくけどいいか?」
従兄弟はどうやら、新しくできた友人も誘ったらしい。
これも断る理由が無いので、快諾する。
簡潔なメッセージを送って、また新太は自分の本棚を見た。
「さて、と」
新しく見つけたイースターエッグ。
内容が想像通りかはわからない。
でも、もしも想像通りだった時のことを考えて、もう一度予習しておこうと、新太は【雨月物語】へと手を伸ばした。
それを手にして、パラパラとめくりながら、
「
下手すると自分以上にのめり込むかもしれない。
のめり込まないかもしれない。
そもそも、あの従兄弟がゲームをする様が全く想像出来なかった。
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