第13話 信じるか?問い詰めるか?
「うそ……だよな」
ソファから立ち上がり、ふらふらと寝室に歩いていく。
ドアノブに手をかけようとして、ピタリと止まる。見守りカメラの設定で嘘をついているんだ。真央に確認するには、まず見守りカメラの設定で嘘をついたことを謝らなければならない。こちらに非がある状態で真央から言質を取るなんて無理だ。
「くっ……」
寝室のドアの前からゆっくりと後ずさった僕は、スマホだけを持って家を出る。ふらふらとあてもなく街中をさまよう。
なんで嘘をついたの?どうして嘘をつくの?今日家に招き入れた人は誰?この前の外泊もあの男と一緒にいたの?答えのない疑問が頭の中で堂々めぐりする。
「……真央が嫌がることはしないようにしてた。もちろん完全じゃないとは思う。だけど、僕は気づかないうちにこんな嘘を真央につかれるほどのことをしちゃったのか?」
頭の中を巡っていた言葉が口をついて出る。
後から思えば、このときは真夜中でよかった。もう少し早い時間なら、他の人とすれ違うなどで聞かれていたかもしれない。
「1年くらい前から家に帰るのが遅くなったのが原因?異動で忙しい部署に配属されてなかなか帰れなくなったから、真央が寂しい思いをするかもって思ったさ。大丈夫って言ってくれたのに。あの男がいるから大丈夫って意味?」
ふらふらと歩いていたのはどこへやら。言葉を出すにつれて足元がはっきりとしてきた。
「いや、そもそもあれは本当に男だったのか?男装が趣味の女性や、LGBTの方、という線はないか?」
僕はUターンをして、家に向かって歩き出す。先ほどまでショックを受けてふらふらしていた僕はもういない。
「真央が好きだ。真央を愛している。だからこそ、盲目に信じるんじゃない。こちらの嘘を押し通して問い詰めるんでもない。とことん調べなきゃいけないんだ」
僕は、覚悟を決めた。真央が不倫をしているのかをとことん調べる覚悟を。そのために、まずは若水さんに相談しよう。
このときの僕はヤケになっていたのかもしれない。けど、方針を決めたら、感じていた頭痛も倦怠感もすべて消え失せたのだった。
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