13.レオとマリアのスキル


[レオ]

《コモン》

【呼吸】【生命維持】【瞬発型体力】【自然治癒】【姿勢制御】【直感】

【忍耐】…………

 ※

【自然回復】【スマッシュキック】【毒生成】【巻きつき】【擬態】【潜水】【ホーンアタック】【嗅覚】


《コア》

 ――

 ※


《レア》

 ――

 ※

【闘争本能〈3〉】【酸素魔素好循環〈3〉】【自在制御〈2〉】

【性欲常態化〈3〉】【軟化・硬化〈2〉】【体内収納〈1〉】

【ぶちかまし〈2〉】【刺突〈1〉】【突撃〈1〉】【破砕噛〈2〉】

【位置掌握〈1〉】【隠匿〈1〉】【洞察〈1〉】


《ユニーク》

 ――

 ※

【スキル吸収〈1〉】【スキル譲渡〈1〉】



 おお! ズラズラと文字が!

 スキルがコモンとかコアとか、種類ごとに分けて表示されているな。

 で、〈〉の中の数字がレベルってことかな?


 んん? 『※』の印でも分けられて――。


「わあ、いっぱいあるね、レオ?!」


 マリアも体を寄せて覗き込んできて、目を丸くして話し掛けてきた。

 俺の右側――背中や腕にぴったりと体を寄せてるマリアの感触……!

 興奮で心臓が破裂しそうだっ!

 い、板に、スキルに集中だ、集中……。


 気を取り直して石板に目を遣ったけど、確かにマリアの言う通り、かなり多いぞ。


 それに……やっぱり『※』印の下のスキルって……。

 【破砕噛】や、くそクソ糞【性欲常態化】があるってことは、魔物のスキルってことだよな?

 なんだよ【毒生成】って! 【擬態】って! ……【ホーンアタック】って!!

 俺に角なんて無いぞ!!


 くっ、マリアがこれを見たら……。


「凄いねっ! 凄いよレオ!」


 ああっ! マリアが俺の肩を叩きながら、スキルの量に驚いている。


 そして、「どれどれ?」って、更に詳しく見ようとしてきたので、慌てて会話を取り繕う。

 彼女の目に、なるべく個別のレアスキルが映らないようにも、身振り手振りのフリをして邪魔をする。


「え? でも、これ魔物のだし……」

「解かってるよ。でも、レアスキルがすっごくいっぱいじゃない!? 絶対役に立つって! ――ええっ!? ユニークスキルまであるぅ!!」


 マリアが青い瞳を輝かせて、自分のことのように喜んでくれている。


「お、おう……」


 なんとか目を逸らすことが出来たか?

 それに、頭の中のアナウンスで“獲得”って言われたヤツって、ユニークスキルだったんだな。

 まあ、他人にスキルを渡したり、吸い取ったりできるなんて並大抵のことじゃないからな……。


「あとでニ階で調べられるように、出来るだけわたしもレオのスキルを覚えとくね」

「だっ、大丈夫だ! なんとかく解かってるから。なっ?!」

「そう?」


 でも……どんな感じのスキルなのか、俺にはなんとなく解かっていても、そんな“なんとなく”じゃあ怖くて使えない。

 なんてったって、魔物のスキルだし。


 婆さんが「スキルのことを調べたければ、ここの二階に資料室があるからそこで調べられる」って言ってたから、ちゃんと調べて把握しなきゃな。

 人間のスキルの資料もあるし、討伐すべき魔物の資料の中にも魔物のスキルについて書かれてるって言ってたよな……?


 あ、【スキル譲渡】で【性欲常態化】を魔物かなんかに移せばいいんじゃね?

 おおお! あっさり解決しそうだ。


 俺がひとり心の中で喜んでいると、マリアが自分のも見たいと交代を促してきた。


 スキルが浮かんだままの石板に、もう一回手をかざすと、また何かが吸い取られる感じがして、今度は光が弱まって文字が消えて元の薄っすら明るい状態に戻った。


 そして、次はマリアが俺と同じように石板に触る。


[マリア]

《コモン》

【呼吸】【生命維持】【持久型体力】【自然治癒】【姿勢制御】【思考力】

【忍耐】…………


《コア》

 ――


《レア》

 ――


《ユニーク》

 ――

 ※

【瞬間回復〈2〉】



「むぅ~。やっぱり少ないね――あっ! ユニークスキルがある! レオがくれたヤツだ」


 そうだ。

 俺たちは元々“スキル無し”だ。売られたり捨てられたりするくらいの……。


「ねえ、レオ? 本当に返さなくていいの?」

「え?」


 俺と体を入れ替えて石板の前にいるマリアが、窮屈ななかで振り返って俺を見上げて訊いてくる。


「【瞬間回復】だよ。やっぱりユニークスキルだったじゃない。貰ったままじゃいられないわ」

「いいんだ。俺はマリアに怪我して欲しくない。本当はどんな痛みや苦しみからも俺が守ってやりたい」

「レオ……」


「でも! 俺はマリアをボスから守ってやれなかった。マリアに痛い、怖い思いをさせちまった」

「そんな……守ってくれたよ? 連れて行かれたことなんて、気にしないで」

「いや、俺が弱かったからだ。……俺が強くなって、どんな敵からもマリアを守ってやれるようになるまで、持っててくれないか」


 俺はマリアの肩を引き寄せて抱きしめる。

 軽く。下半身が当たらないように、身体をちょっとずらして。


 マリアは、俺の肩に顔を埋めて何度も頷いている。

 こころなしか肩が熱い。


「うん、わかった。……レオ?」

「ん?」

「ありがと」

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