第16話 ホテルの信用と味、そしてうなぎ飯

 そうそう、肝心の味や、味。

 一言で申して、関西の老舗ホテルらしい、品のある味付けやったな。


 列車食堂とはいえ、参入している以上、自分の会社の「看板」になるわけや。

 そりゃあ、ホテル内の和食レストランで食べるのと同等くらいのものは出さないと、信用問題になりましょうが。

 これだけ申し上げたらわかりましょう。

 少なくとも私は、新大阪ホテルのほうが旨かった。

 関西風の味付けというのも、あったかもしれぬ。私自身、神戸の出身やけど、それもあって、関西の味に子どもの頃から慣れているのは大きいよ。


 聞けば、渡辺君もほぼ同意見ではあった。

 ただ、日本食堂のあの味も悪くはない、何より肩がこるようなものじゃないのが江戸前寿司の真骨頂ですよと、そんなことを言っておられました。

 それにしても、新大阪ホテルの寿司は、よろしかったですな。


・・・ ・・・ ・・・・・・・


 結局、岐阜を過ぎて木曽川を渡ったころまで粘って、ようやく出ましたわ。

 それでまた、1車両超えた前の一等車の座席に戻って、私ら二人、しばらくリクライニングを倒して休みました。

 あの車両の窓は上から下に降ろすものでしたから、上のほうを少し開けまして、風を通しました。

 まあ、扇風機を回すほどでもないので、そちらのスイッチは押しませんでしたけどね。

 でも、周りの誰かが押してくれたようで、程よく空気が室内を回ってくれて、なおさら快適になりましてね、しばし、うとうとしておりました。


 その日はまたその後、浜松名物のうなぎ飯を車内販売で買いまして、リクライニングを幾分戻しましてね、ぼちぼち食べましたわ。

 これだけ食べれば、もう十分ですよ。

 何と申しても、昼こそ抜いてこの「せっつ」に乗込んだものの、その後寿司2人前少々を食べて、ビールも飲みましたから。


 東京に着いたのは21時台で、それから電車に乗換えて会場近くの旅館に入りましたけど、前もって夕食を不要にしておりましたから、宿泊料は少し安くできましたかな。

 その日は結局、寝酒にビールを飲んで、よく眠れましたよ。

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