解のたまご
あれから数日。
祭りの余韻を惜しみながら、訪れた友人たちは故郷や次の目的地に旅立っていった。
ディルはしばらく町に残ってフローリアについて回っているようだが、彼女とマイノの怒りを解かなきゃならないし、色よい返事がもらえるかどうかは未知数だ。
まずはお友達からじゃない?先は長そう。
聚合の魔法使いは銀の珠の詳細が気になるのでヌンドガウからの返事を待つと言って、森の周辺に
暇そうに町の子供達を集めて法螺話したり、ディルに余計なアドバイスして遊んでるから、薬草の採取とか手伝わせてるけど。
そんなに知りたければ直接ヌンドガウに出向けばいいのに。ハッキリ言って邪魔すぎる。
そんな春の終わりのある日。
思いもかけないところから報せがもたらされた。
日も暮れて夜が近づいた頃、僕とお師匠さまが森の薬草採取場所から戻って来ると、家の前に3人の人影が見えた。
1人は大きなシルエットから察するに聚合の魔法使い。あとの2人は……。
「クローロテス」
僕をそう呼ぶのは実の両親だけだ。獣人の王国を統べる王である父、ウィリディウム・マリスライト・ドラグーンは金の竜、母キュアノスは銀の竜。
竜種は長寿であるし、特に後継に拘ってない彼らには再会してからも自由にさせてもらっている。
でもこちらから出向くことはあっても2人が訪ねて来るなんて珍しいこと……にしても気軽すぎない?いくら竜人が強くても2人だけで来て大丈夫なの?
簡素ながら上質な青い衣装を身にまとった金色の髪に青い目の壮年の偉丈夫と、僕に顔立ちの似た銀色の髪に紅い眼、青いドレスの嫋やかな女性が近づいてくる。
両親は僕を両側から抱き締めると、お師匠さまに向かって頭を下げた。
「お久しぶりでございます。魔女様」
「あ、いえ、そんな」
僕にとっては両親だけど、王様とお后様という立場の彼らに頭を下げられて、お師匠さまが珍しくあたふたしている。
ひとまず皆で家の中に入り、僕らが汚れた服を着替えている間に、魔法使いはハーブティーを淹れて僕の両親をもてなしていた。勝手に。
悪びれもしない笑顔を振りまいて、魔法使いがお茶を勧めてくる。お前の家か。
「ちょうど森の手前で会ったから家まで案内してきた」
「魔法使い殿もお久しぶりですな」
「クローロテスは失礼をしておりませんか?」
「いえいえ、レピ君は良い子ですよ~」
小さな家にキラキラしい両親がいるのも妙な感じだけど、魔法使いと3人で和気藹々、親戚の集まりみたいに話してるのも居心地が悪い。
「……あの、それで?本日はどのようなご用件でこちらに?」
お茶を一口飲んだお師匠さまが恐る恐る切り出すと、父は腰に提げていた袋から、そっと中のものを取り出した。
テーブルの上に置かれたのは金の冠。編み上げた細い金細工に、煌びやかな青い石の嵌った凝った意匠。
前に盗人が獣人の王国から盗み出したものだ。
「ヌンドガウの姫に話を聞いてやってまいりました。これは代々王家に伝わる王冠です。クローロテスが見つけたという銀の珠とは、もともと
ええ!?そうなの?
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