迷のたまご

 いるかどうかも分からない犯人捜しをするかどうかは置いといて、いったんローズ達と別れた僕は、小川沿いに森の中を歩いていた。


 木々の間から零れる木漏れ日がちらちらと風に揺れる。僕は一瞬ゲームを忘れて風の精霊達の声に耳を澄ませた。

 でも、彼らはゲーム開催中に話しかけるのは遠慮しているのか、さやさやという風音しかしない。それもそうか。ウッカリ情報を漏らされてもズルになってしまう。


 その代わり、と言っては難だけど、風に乗って人間の声が聞こえて来た。子供が泣いているような、悲しそうな声。それと大人の男の声が複数。

 何かあったのかな。僕は声のする方に向けて歩いて行った。


 木立を抜けて少し広い場所に出ると、そこにいたのはディルとマイノだった。あと、木の枝の間に腰かけた赤い頭巾の10歳くらいの知らない女の子。

 街の子ならみんな知ってるから、多分彼女はよそから来た子だろう。少女は悲痛な声で身も世もなく泣きじゃくっている。


「ううっ、ぐすっ、ぐすっ……ママ、パパー」

「おい、降りて来い。迷子預り所に連れてってやるよ」

「ばか、お前、そんな言い方したら怯えるだろうが」


 ディルは仏頂面で少女に話しかけている。勢いよく差し出された大きな両手を怯えた眼差しで見た少女は、もっと大きな声で泣き始めた。うん、あれは怖いよね……。

 かと言ってマイノの見た目が怖くないかというと微妙なところだ。今じゃ縦も横もデカいし、ディルに噛み付いてる顔は少女を怯えさせるには十分にイカつい。

 僕は彼女を怯えさせないようにそっと3人に近づいた。


「どうしたの?」

「あっ、レピ様」

「この子迷子みてえなんだ」

「うわーん!パパー!ママー!」


 僕はちょっと考えて、彼女の目の前で小さく指を鳴らした。現れた赤い花弁の可憐な花を、少女に差し出す。


「お花は好き?」

「……うん。今の魔法?」

「そうだよ。これは宝探しとは関係ないから、使ったことは皆に内緒ね」


 泣き止んだ少女は零れそうに大きな茶色の目をさらに見開いて僕を見つめた。頭巾の下は、綺麗な栗色の巻き毛だ。彼女は涙の残る目をぱちぱちさせて、花と僕を見比べている。


「貰っていいの?」

「もちろん。君のお名前は?」

「シャーリー」

「シャーリー、降りてこられる?君を迷子預り所に連れてってあげたいんだ」


 にっこり笑ってゆっくり手の平を差し出すと、シャーリーは頬を少し染めて、おずおずと僕の手を取った。

 僕の後ろでディルとマイノが「すげえ」と呟いていたけど、無視した。君達が荒っぽすぎるんだよ。

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