私刑執行
放課後。校門を出てすぐ、眼前に立ち塞がった人に制服のリボンを引っ張られる。彼女は同級生の、
「暴行すると、出席停止になってしまいます。手を離してください」
同級生が、
今や、
とはいえ、罰せられる人が増えることを望んではいない。
「なんもしいひんでも、処分されるさかい、変わらへんどっしゃろ。ほな、こらどないですか?」
でも、生徒会に見られていなければ、大丈夫。今ならまだ、
「まだ大丈夫」
「大勢に見られてますで。恥ずかしいのに、よう平気でいられるなぁ。もっと、よう見したってください」
「待って……やめて」
「何しても罰は変わらしまへん。せやったら、何しても構しまへんよね?」
(主張は正しい。程度は、処分内容に影響しない。だから、彼女にとっては構わない。私個人の心情として、嫌というだけ……どうすればいい? 手を出せば校則違反となり、同罪となってしまう。だから、抵抗する選択肢は除外……我慢して、耐えていれば終わる? どうすることが正解なの?)
「……罰は変わりません。でも、やめて欲しいです」
「やめると、減刑されるのん?」
周囲には、
「されません」
「せやったら、やめる理由無おすなぁ」
「ほんま、ええ表情やねぇ。隠さんと、もっと見せとおくれやす」
(もういい……)
翌朝。登校中。
学校に近付くにつれ、
校門前に立つ人から向けられる、強烈な視線。重い前髪越しに見えるのは、
「よう来れるなぁ。明日はきいひんのやろうな」
目を合わせたくない。離れた場所を通る。それでも、
耳に突き刺さる嫌味は、
大きな声には、多くの声であるかのように、錯覚させる効果がある。
翌朝。校門前には、また
横を通り過ぎないと、校内に入ることが出来ない。俯いて、足を前に進める。
「今日も
身動きを取れず、立ち止まっている間、浴びせられ続ける嫌味。
なんとかして前に進もうと、人の配置を確認するために顔を上げた際、一瞬視界に入った、ゴミを見るような目が、脳裏に焼き付いて離れない。
翌朝。また
「いつまで来るんやろ?」
無関係な第三者であっても、目や耳から入る情報は、無意識に脳に刷り込まれていく。
直接的な、生活への支障の有無に関わらず、来なくなっているかを確認するために探されるのは、精神的な負荷が大きい。
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