疫病神――某種と思しき僕らについて――

せとかぜ染鞠

第1話 時間潰しも失敗

 1 5時のチェックインまで 時間潰しさせてもらうつもりで ,店頭の縁台に積み重なる雑誌の前で中腰になり,5人組の韓流アイドルの笑む表紙の1冊を手に取り,頁をひらいて丁寧に文字列を目で追っていると,股間にごわごわした感触を覚え,雑誌が持ちあがり,マリンブルーの眼をした猫ににゃあと鳴かれるものだから,面食らっていたところ,書架と書架との間にのびる通路の奥から杖をつきつつ出てきた白髪の店主に,古雑誌の処分に困っているので好きなだけ持っていけと言われる。

 読みかけの一冊を小脇にかかえて店を出た。こんなことまで失敗する。まだ正午を過ぎたばかりだった。

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