第30話 Sweat (汗) アリス編
アリスの今日は、珍しく陽の光が差す晴れたホワイトシティでシンクレアとクリフタウンの有名洋服店「グレード・キャリオン」に少し寄ってから、聖パッセンジャー・ビジョン大学付属古代図書館へ勉強をしに行くことになっていた。何故なら単位認定試験の日が差し迫っていたからだ。
だが、アリスにとっては、単位認定試験もグレード・キャリオンの洋服もそっちのけで自分に浮き出た聖痕のことを調べたい気持ちだったが。
焦燥感が募るが、シンクレアの手前なので普通に楽しくしていこうと決めた。
アリスはシンクレアと路面バスでセントラル駅へと向かった。駅からクリフタウンへと向かうのだ。
激しい雑踏の中の改札口で、ちょっとしたアクシデントがあった。
アリスは袖の長いカジュアル服を着ていたのだが、一人の少女にぶつかり袖が引っ張られ、聖痕が周囲の人に見られてしまったのだ。周囲の人の中で一人。こちらを鋭い目で見る男がいた。異様な男で顔が真っ白で肌の色も灰色に近い。その男は、すぐに人混みに紛れてしまった。
「あら?」
「ぶつかって、ごめんなさい。あれ!? お姉さんのその傷……私と同じなのね……」
「あ……ねえ!」
ぶつかった少女は何か急いでいるのだろう速足で混雑している改札口を抜けてしまった。今の時間はラッシュアワーではないが、乗客は多い方だった。
アリスは少女を見失ってしまった。
「ねえ、アリス。その傷は……? 何かあったらモートにちゃんといわないとダメよ」
シンクレアがショルダーバックを開け、綺麗な刺繍のしてあるハンカチを取り出した。それをアリスの右手首に巻いていく。
アリスはシンクレアの気遣いに嬉しくなると同時にぶつかった少女を探したかった。
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