夜を狩るもの 終末のディストピアⅡ meaning hidden

主道 学

第1話 000

 シンシンと雪が降るここはホワイトシティ(通称 雪の街)一年間を幾度も通り越しても雪が降り続ける森閑な街だった。

 モートはこの街が好きだった。聖パッセンジャービジョン大学へ向かう途中でも、街の人々の会話の中からも、この銀世界を誇りに思う言葉が聞こえてきた。


「一昨日。あのヘンドリーが、ここから数十ブロック(1ブロックは約100メートル)先のイーストタウンにある雪に埋もれた車から、外国から来た奴からお願いされて、荷物を取り出してやったんだって」

「へえ、それでどうした?」

「人助けができて良かったってさ。助けられたそいつが言うには街の人たちの心も真っ白な雪みたいだってさ」

「へえ、そいつはいいや」

「でも、最初は旅行鞄とかは普通だったんだけどな。鞄のなかから麻薬がたくさん入っていて大騒ぎになったってさ」


 通行人の会話でわかる通り、美しい街と綺麗な心の人々だが、夜になるとホワイトシティはその風貌を一変し、恐ろしい犯罪が横行する。

 モートは歩きながらそんな話を静かに聞いていた。


 ホワイトシティには、南にヒルズタウン(丘)、西にウエストタウン、東はイーストタウン。北にクリフタウン(崖)という地名が人々から付けられていた。アリスの屋敷があるヒルズタウンは高級住宅街が連なり、グランド・クレセント・ホテルというホワイトシティではもっとも格調高いホテルなどがある。


 ズダン。


 モートは聞き入ってしまい。凍っている歩道で派手に転んでしまった。

「あら、モート。大丈夫ですか? やっぱりバスが故障しなければ良かったですね。一緒に通学できたというのに」

「それにしても、あのホワイトシティを救ったモートがこんなところで転んでいるなんてね」

「……ああ、バスのエンストどころの騒ぎじゃないね」

 転んでいるモートに優しく手を差し伸べたのは、大学のクラスメイトでフィアンセのアリスだった。他に話し掛けてきたのは、シンクレアだ。アリスの唯一無二の友人のシンクレアはアリスとは対照的な性格と家柄を持つ。アリスは少々非社交的な性格で大資産家の貴族の出だったが。シンクレアは貧乏だが、とてもおおらかな性格だった。

 聖パッセンジャービジョン大学はクリフタウン寄りにある。しばらくして標高5千メートルの雪の山 通称 ホワイト・グレートという真っ白な山が三人には見えてきた。

 

 その時、突如天から透明な階段が現れて、一人の男が降りてきた。


「やあ、モートくん。久しぶりだね。さあ、今日から狩りの時間ですよ」

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