夜を狩るもの 終末のディストピアⅡ meaning hidden
主道 学
第1話 プロローグ
ここは、ホワイトシティのクリフタウンという場所。
雪の積もる殊の外寒い夜だった。山に面した子供たちの通学路で、川辺に一台の普通自動車が止まり、一人の男が静かに降りた。それから、男は懐の中から薬品が染みこまれたハンカチを取り出す。
空には大きな白い月が浮き出ていた。
シンと静まり返ったその夜の中へ。一人の赤い髪の少女が草木覆う細道を歩いてくる。男は慎重に近くの草むらに身を隠した。息を大きく吸って、草むらから少女の背後目掛けて忍び寄る。と、その時。
ザンッ!
一際、大きな鈍い音と共に、草むらに隠れていた男の首があらぬ方向へ、滑り落ちる。白い雪の積もった草むらに鮮血が飛び散って、真っ赤になった。
真後ろには、いつの間にか黒のロングコートで、銀髪の長身の男が銀色の巨大な鎌を持ち突っ立っていた。
「うん?」
銀髪の男は、近くを何事もなかったかのように、通り過ぎていく少女の右手首に、目立つ傷があることに気が付いた。
―――
ホワイトシティのイーストタウンの貧民街の一室。
パンチパーマがかかった少女が寝室のベッドで、夜更かしをしていた。少女は本を読み漁っている。その本は外国語で書かれた恋愛小説だった。
急に、玄関が騒がしくなった。ドタドタと大きな靴音がしてきて、少女は本を読むのを止め。この部屋のドアを開けて恐る恐る外の様子を覗いてみようとした。
だが……。
そこには、突っ立っている男性のような胴体があった。立ったままのその物体には、胴体から上のあるものがなかった。
そう、首がないのだ。
他に、廊下に血塗れの知らない男たちがガクガクと震えていた。そして、男たちは、とある一点を見つめている。
その凶悪な顔の男たちを少女は知らない。
当然、従姉妹の知り合いでもないし、家族も知らない。そのまったく知らない男たちが、一斉に逃げ腰になった。手には、全員トンプソンマシンガンが握られていた。
と、突然、音もなく廊下の右側の壁から銀の大鎌が現れ、男たちの首を次々と素早く狩っていった。
大量の血液が巻き上がる。
少女は何が起きているのか、さっぱりわからず震えて混乱していた。
その後は、銀髪の男が廊下の壁から静かに顔を出し、少女の方を見つめた。銀髪の男が少女の手首の刺青に気がつくと、銀髪の男は一瞬だけ意外そうな顔をした。そして、そのまま壁の向こうへと、また音もなく消えていった。
そして、そのまま銀髪の男は二度と壁から現れなくなった。
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