ぶりっ子魔術師に脅されてます!〜守られたがりのぶりっ子勇者魔術師が僕の命を握っているけど、パーティ内カーストを成り上がっていく話〜
@blueapplebyte
第1話「初めての冒険者パーティ」
魔道具の用意は万全だ。回復のためのポーション、焔の小瓶、流水の巻き物、その他色々。今日のために買った新品のローブに入れてきた。杖の整備も大丈夫。昨日、一時間点検をして問題なく使えてた。あとは、
「アティクくん、パーティは初めて?」
慌ただしく自分の体を探っていた僕を見てパーティリーダーのマルファクさんが話しかけてきた。マルファクさんは高い実力を持ち、カリスマ性もある。それ故にこのパーティもギルド内のトップ層に値し、パーティメンバーも少数ではあるが精鋭揃いだ。
「あ、ごめんなさい、考え事してて」
「はい、パーティは初めてです。ずっとソロだったので」
「ソロ、それであの実力か! 素晴らしいね。努力家の星だ」
「へへ、ありがとうございます」
マルファクさんのパーティは僕にとっての目標だった。冒険者として安定して食べていくにはレベルの高いパーティに入り、レベルの高い依頼をこなしていくこと。どれだけスキルを持った冒険者でも、ソロでは依頼に限界がある。だからこそ、食いっぱぐれないようにパーティに入らなければいけない。
今回、パーティに参加出来たのは本当に運が良かったとしか言えない。
中途半端なパーティに入ればほとんどの場合、その場に甘んじてより高いパーティに入ろうとしない。
僕としても一度居心地の良さを感じたら、仲を深めたら他のパーティに移ろうなんて考えないだろう。
だからこそ、レベルが高く、かつリーダーが好青年であるマルファクさんのパーティを目指していた。そのためにも、ソロで自分の魔術を鍛え上げた。連携に必要な魔術、単身でも活躍できる魔術。
そんな時に、パーティの募集がかかった。回復魔術、補助魔術を扱える魔術師を臨時募集。一度きりの採用だが、ここで縁を結べばこのパーティに参加することが出来る。
実際にパーティに入ってみると想像通りだ。盗賊と盾戦士が魁を務め、敵の気配を探る。そして、何よりも頑丈な格闘家が殿を務め、後方を守る。主力である聖剣士のマルファクさんはいつでも敵に向かえるように魁の後ろを歩き、その後ろには魔法職が居る。
完璧な布陣だ。ただ一人を除けば。
「マル〜、ダンジョンまだぁ?」
「まだだよ。ラブグッド」
「え〜、ラブ、とっても暇だな〜って」
ラブグッド、四人しかいないパーティメンバーの唯一の魔法職。男所帯のパーティ、唯一の女子。武勲溢れるメンバーの中で唯一、実績の無いメンバー。彼女がどれほどの実力を持っているのかは知らないが、実力主義のパーティに入れているということはそれなりに実力があるのだろう。
だが、それにしても彼女の態度や格好は目に余った。魔法使いと言うにはフリルが多く、女性らしい服装に、地雷めいた黒いハーフツイン。
声色はとても甘く、かつ扇情的で、猫を撫でたような声を出して、メンバーにくっついている。他のメンバーも彼女の振る舞いに惹かれているようであり、彼女が話しかけると口角を緩めている。
しかし、実力はあるのかもしれない。見た目と振る舞いだけで、決めつけてはいけない。
「前から敵の気配がする」
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