第37話 オーガ、撃破される
「くっ……ここは分が悪い……さらばだ!」
ドラゴンは不利だと判断したのか、どこかへ飛び去ってしまった。
よし、これならオーガに……。
「どわ!?」
……突然後ろから力が入り、私は地面に尻餅をついた。
「邪魔だ! クソ女!!」
「貴方のような馬鹿に報酬を奪われたらたまりませんよ」
「……カロン、ニクス」
私がオーガに向かおうとしたその時、カロンとニクスが私を押し倒し、オーガに向かっていった。
私は腕を伸ばし、2人に向かって叫んだ。
「待って! そのオーガは……」
「おらぁ! 死ねや!! これで報酬をゲットできるぜ!!」
「全く……かわいい弓ちゃんの錆にしてくれます!」
2人は私の制止の声に耳を貸さず、オーガに攻撃を仕掛ける。
他の冒険者がオーガの圧倒的な力で押されている中、2人は疲弊しているオーガをまるで死体を蹴るように攻撃した。
そして、オーガは……。
「アタシを……愛して……」
……絶命したのか、動かなくなった。
「へへ! これで報酬ゲットだ! おらぁ!!」
カロンは動かなくなったオーガの頭に向かってハンコを押すように踏みつぶしまくっていた。
私はその様子を……ただ見ている事しかできなかった。
「醜いモンスターのくせに愛を語るなど……本当に馬鹿ですね、天才なる我らには到底届かないというのに」
「全くだぜ! 人間様に勝てると思ってんのか!? おらぁ!!」
……彼らは自分らを高貴な人間だと言っているが、私には、そこに転がっているオーガの死体よりも汚く見えた。
「おう、アニマ! テメェより先にこいつを倒したぜ! 騎士団のお墨付きさんが、トドメを刺せないなんて、何やってんのかなぁ?」
「……」
私は……何も言えないでいた。
「それよりも……ヒドラはどこに行ったのでしょうね? 探しても見当たりませんでしたが」
「さぁな、ま、奴には報酬を与えなきゃいいだろ、俺らで山分けしようぜ」
……当然とも言えるが、2人には、今転がっている怪物が、自分たちの仲間であることなど知らない……そんなことわかっているのに、私は2人の発言が異常のように思える。
どこかで怒りが燃え、立ち上がろうとした……その時。
「……アニマさん」
……ボロボロのロープが、私に向かって手を伸ばしてきた。
我に返った私は、その手を掴み、立ち上がった。
「……行こう、ロープ……こんなところに居たくない」
「……はい」
私たちは手をつないで……その場を去った。
「おい! 何も言い返せないのか! クソ女!」
「全く……負け犬の遠吠え1つも吐けないとは……」
「ははは! おい! お墨付きさんよ! なんか言ってみろよ!」
「カロン、あんな知恵遅れの相手をする時間なんて勿体ないですよ、それよりも、こいつの処理をしましょう」
「ははは! だな!」
……2人の会話など、もはや私には聞こえなかった。
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