第23話 水が欲しい

「じゃ、まずはお水だね」

「はい!」


 私たちは手をつないで、屋台へと向かった。


「すみません、お水二人分ください」

「はいよ」


 お金を払い、お水を受け取ると、私たちは早速それを飲み干した。

 そうとう喉が渇いていたのか、いつもよりも水が美味しく感じられた。


「美味しいですね、アニマさん!」

「そうだね」


 ロープの言う事には同意だった。

 特に今日は乾燥してるし、余計にそう感じる。


「にしても、今日乾燥しすぎじゃない?」

「そうですね……火事とかが起きたら大変ですね」


 火事か……本当に起きたら大変だ。


「なぁなぁ、聞いたか? 辺境の湖が突然干上がったらしいぞ!?」


 ……私たちが世間話をしている中、道端で男性たちがヤバそうな会話を繰り広げていた。

 湖が干上がった!? 本当なら相当だな……。


「嘘つくなよ、辺境の湖っつたら、この辺で一番デカい湖じゃねぇか」

「マジなんだよ、俺の取引相手の行商人が言ってたんだ、なんか周りにはカラカラに乾いた人間の死体があったらしくてよ……」

「おいおい、ますます嘘くさいぞ」

「マジだって! しかも聞いてくれよ、その行商人の知り合いがよ……王都に着いた瞬間同じようにカラカラに乾いた状態で死体になってたんだとよ!」

「お前いつからホラを吹くようになったんだ?」


 ……つい、男性たちの会話を聞き入ってしまった。

 カラカラに乾いた死体!? どういう状況!?

 なんか……そういう話を聞いてると……水飲みたくなってきたかも……カラカラになりたくないし……。

 もう一杯欲しいな……買っちゃおうかな?


「ロープ、もう一杯買う?」

「そうですね……まだちょっと飲みたいです!」

「じゃ、もう一杯買おうか」

「はい!」


 私たちはもう一杯貰うため、先程の屋台へ向かった……。

 屋台には、少しみすぼらしい恰好をした女性が、屋台の主人に対して話しかけていた。

 ……あの人、大丈夫かな? なんか目も虚ろなんだけど。


「水……ください」


 屋台に近づくと、女性はそんなことを口にしていた。


「だから、金払ってくれよ!」


 屋台のご主人は女性に対してそう言う。

 あーなるほど、ただでお水をくれと言っている訳か。

 向こうも商売だし、お金が無い人にタダでお水を渡すわけにも行けないよな……。


「喉……乾いた、水……ください」

「あんたなぁ……乞食なら他でやってくれよ!」

「水……飲みたいんです」


 ……うーん、ご主人困ってるみたいだし、ここは私が出してあげようかな? ちょうどお金も余ってるし。

 小銭を出して、声を掛けようとした……その時だった。


「お水……水……水飲みたい……喉乾いた……お水が……お水が欲しいのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

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