第2話 生い立ち
「……さて、これからどうしようか」
私は宿屋に戻り、床の上で体を休める。
宿屋とは言っても、ベッドも何もない部屋しかない……一番安いところだ。
「……お母様」
こんなことなら……家に残って好きでもない貴族令息と付き合っていた方がよかったのかもしれない。
……私が冒険者になった理由、それは単に貴族社会に嫌気がさしていたからだ。
「ティラノバーグ伯爵家」、この王国の貴族の中では大きく名がある家だ。
私はそこの長女として産まれた……が、優秀な兄、妹を見て、なんだがそこにいるのが嫌になってきた。
どんなことでも兄と妹と比較された。
あの子はできるのにどうして貴方はできないの? ……そんな言葉を毎日のようにお父様に言われた。
……でも、お母様は違かった、「兄は兄、妹は妹、そして貴方は貴方、貴方にだって得意なものはあるでしょう?」そんなことを言ってくれたっけ。
そんなお母様は……私が10歳の時に病気で亡くなった……凄く辛かった。
でも、お母様のためにも、立派で真っ当な人間になろうと考え、日々努力をした。
……そんなある日、お父様が「お前の結婚が決まった」などと言ってきた。
お相手は公爵家のお坊ちゃん……正直顔は悪くなかったが、実際会って食事をすると……かなり嫌だった。
貴族のくせに汚い食べ方、品のない会話、私の見るいやらしい目。
……思い出すだけで寒気がする。
こんな奴に嫁がなきゃいけないのか……他にマシな男はいないのか?
……いないだろう、寧ろおこぼれの私が公爵家の人間と結婚できるなんて幸運な方だろう。
でも……こんな人とは付き合いたくない。
私は一方的に婚約を破棄し、飛び出した。
……そして、ここ、「カラット王国」の王都へとやってきた。
右も左もわからない私を拾ったのが、カロン達だった。
カロンのパーティに加入後、私はジョブ「変身」を授かった。
鳥になって敵の情報を伝えたり、猛獣になって敵に攻撃したり……。
私はカロン達の役に立とうと必死に頑張ったが……どうやら、使えないと判断されたらしい。
……1人じゃ宿代を稼ぐことも難しい。
生きるために……体を売るしかないのだろうか?
……ダメだダメだ! ちょっとショックなことが起きたからと言って、そういう事を考えるのはよくない。
冷静になろう……そうだ、明日の朝、新しく組んでくれる人を探すとしよう。
そうだ、きっと見つかるはずだ……きっと。
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