動物に成り切るしか能がないと言われて追放された私、慰謝料代わりにもらったゴミアイテムで街に現れたモンスターを倒したら英雄になった件~ジョブ「変身」は未知の魔道具を覚醒できる唯一無二の能力だった~

立風館幻夢

第1話 追放と慰謝料

「アニマ! この際だから言わせてもらう! お前は足手纏いだ!」

「はぁ……」


 冒険者の任務を終え、飲食店での反省会。

 その中で、私こと「アニマ」は怒られていた。

 怒っているのはこのパーティの長を務める「カロン」という男だ。


「そうよ! いっつも動物に成り切ってはアタシたちの妨害して! もう組んで数年になるけど……ほんと、『変身』は使えないわ!」


 今怒鳴ったのは、副リーダーの「ヒドラ」、カロンのガールフレンドでもある。

 変身、私のジョブだ。

 冒険者は皆、「ジョブ」というものを持っている、私は「変身」、カロンは「剣」、ヒドラは「魔法」といった感じだ。

 私は動物やモンスターに成り切り、敵を欺いたり、動きやすい動物に変身して援護したりしているのだ。

 だが、2人はそれに不満のご様子だった。


「あの、何が悪かったか教えてくれないか? 具体的に教えてくれないと私もわからない」


 私はそれとなく2人に聞いた。

 ……すると、それまで黙っていたパーティメンバーの男、「ニクス」が口を開いた。


「じゃあ僕が説明するよ、馬鹿な君にもわかりやすくね。いいかい? ハッキリ言って邪魔なんだよ、鳥みたいにちょこまか動き回ると思えば、いきなりゴブリンになって攻撃を始めたり……合わせなきゃいけない僕たちの身にもなってくれよ、おかげで僕の愛する弓矢ちゃんが泣いてしまっているではないか、おーよしよし」


 ニクスは愛用する弓を赤子のように撫で始めた。

 この男のジョブは「弓」、三度の飯よりも弓矢を愛している、変わった奴だ。


「……以上の事から、僕はアニマの追放を所望する、2人は?」

「俺も賛成だ、アニマ、今日からお前はクビだ」

「アタシも賛成―、二度と来るなよ、この役立たず!」


 3人は私を指さし、糾弾を始めた。

 ……仕方がない、向こうが嫌なら出て行こう、癪に障るが。


「……わかった、出て行こう。今までお世話になりました」


 私は席を立ち、外へ出ようと体を向けた。


「……まぁ、待て」


 ……すると、カロンが去ろうとする私に声を掛ける。

 なんだろうか?


「まぁその……フフ、あれだ……ククク……慰謝料がないとあれだろ? これ持って行けよ」


 カロンは慰謝料と称して、この間入ったダンジョンで見つけたアイテムたちを見せてきた。

 1つは、まるで泥をかぶったかのような腕輪で、誰がどう見てもガラクタにしか見えなかった。

 2つは数枚のカード……とは言っても剣が描かれているカード、弓が描かれているカード、杖が描かれているカードが1枚ずつと、まっさらなカードが数枚という、何の用途もなさそうな代物だった。

 ……正直、殴りたかったが、ここでやったら店の迷惑になると考え、冷静にそれを受け取った。


「……ありがとう、感謝するよ。それじゃ」


 私は貰った「慰謝料」を握りしめ、食堂を後にした。

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