第四話
「天衣ちゃん可愛いねー」
「リーダーこれ意味あることなんですか?」
朝部屋を出ると2人のそんな声が聞こえてきた。近づいて行きおはよーと声をかけると、天衣は飛奈にお巡りさん風の帽子の両脇からワンちゃんの耳のようなモフモフが垂れ下がっている帽子を被らされていた。
なんで犬耳におまわりさんの帽子なのと飛奈に話しかけると、、。
「保乃先輩、犬といったら犬のお巡りさんに決まってるでしょ」
私のことなど気にも止めず、邪魔しないでよとでも言わんばかりに冷たく言い放たれた。決まってるんかい!と突っ込みたかったが、忙しそうにセカセカと衣装袋を弄り出すと何かの衣装を取り出してきた。
その衣装は警察官の制服っぽい感じにはなっているが、やたら布面積が少なくなっていて、胸元が大きく開いていてオフショルダー、ミニのプリーツスカートとなっていて、スカートのお尻の部分には尻尾を模したと思われるモフモフが付いていた。
「これを着てまた何処かに潜入捜査とか何ですか?」
「そうよ」
「じゃあまた梨名さんと一緒にですか?」
「そうよ」
そこに梨名が起きて来て、、。
「天衣何やってんの?」
「梨名さん、これ着てまた潜入捜査ですって」
「お前はどんだけ、お人好しなんだよ。そんなに目立つ服装でどこに潜入すんだよ!」
梨名にそう突っ込まれても、天衣は全く分かってない様子なので大笑いしてしまった。
「あなたそれ、多分飛奈のただの趣味だと思うわよ」
続いて起きて来た華鈴さんにそう言われて、天衣は初めて自分の状況を理解したのか顔を真っ赤にしていた。
「ちょっと、リーダー騙したんですかー?」
「騙してなんかいないわよ。その格好で潜入してもらって相手を油断させようって手よ」
「悪徳業者がこんなんで油断する訳ないじゃないですかー!」
「何言ってんのよ。もう全員イチコロよ」
「天衣ちゃん、可愛いねー、ご飯あげるからこっちおいで、はい、お手」
「お手って、絶対おちょくってますよねー!」
全く何をやってるんだかこの子達は、こんな2人はほっとく事にして、華鈴さんと梨名と一緒に作戦を考えることにした。
「やっぱり中の状況が知りたいわね。中に何匹の犬がいてどんな状況になっているか分からないと助けられる命も助けられなくなってしまうわ」
私がこの前みたいにドローンで偵察できない?と聞くとそのプレハブの中に侵入させないかぎり無理よ。もし周りに人がいて偵察ドローンに気が付かれてしまったら、何か勘繰ってる奴がいるのかもしれないと思われてしまうかもしれない。そうなるとセキュリティを強化されかねないと言われた。
「なら直接乗り込んでその場にいた人間、全員始末しちゃえばいいんじゃない?」
「それは強引よ」
朝早くに行って覗いてくるのは?というと相手は犬よ、人が近づいたら大声で吠えだしちゃうわよ。と言われてしまった。答えが見つからないでいると華鈴さんはいきなり『そうだ!』と大声を上げた。
「どうしたんだよ?」
いきなり立ち上がりパソコンの前まで行くと例の長野の事件のニュース記事を開く、、。
「ここ見て」
そう言われ指差されたところに表示されていた文字を読むと『2〜3日でこんな仕事はできないと辞めていく子が多い』と書かれていた。
「もしかしたらここもこんなところで働きたくないって言われてすぐに辞められて、働き手募集してるかもしれないんじゃない?」
「おお、なるほど、で、求人出てるのかよ?」
「ちょっと待ってねー、あったこれじゃない?」
華鈴さんが表示した求人募集に書かれていた連絡先の住所は間違いなく例の場所だった。要するに募集を見て来たと言って中に潜入するってことなのだろう。
「なんだこの求人は!?動物と触れ合えるやりがいのある仕事ですとか書いてあるよ!マジふざけてんなコイツ等!早くぶち殺してやりたいんですけど!」
「私が行くわ」
そういうと2人は何勝手に決めてんだよと言わんばかりの目を向けてきた。
「観察眼には自信持っているつもりよ」
「観察眼なんて関係ないだろ、カメラ持っていくんだろ?」
梨名がそう言って華鈴さんに返事を促すと、中の様子を撮影すればそれで済む問題だから行くのは誰でもいいはずよと言ってきた。
「もし梨名が潜入したとして、冷静でいられる自信あるの?」
私がそういうと梨名は黙り込んでしまった。それに華鈴さんが潜入して何かあった時すぐ対処できるのか?と聞くと同じく黙り込んでしまった。
「じゃあ私で決まりね」
「分かったよ。でも何かあった時のためにナイフぐらいは持っていけよ」
「そんなのなくても大丈夫よ」
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