第66話 ドラゴン乗りの駆除

 私はアリスさんとともに、ダンジョンを進んでいる。

 やはりというべきか、戦闘スキルは彼女の方が上だった。


「フーリズ、マキシマム!」

 

 アリスさんが呪文を唱えると、目の前にいるスライムのほとんどが氷漬けになった。


「瑠璃さん! 今です!」

「あ、うん!」


 私は固まったスライムどもを刀で一刀両断した。

 スライムたちは、まるでダイアモンドダストのように粉々になった。

 しかし、これで終わりではなかった。

 向こうから、緑の怪物……恐らくゴブリンの群れがこちらに近づいてきたのだ。

 しかも奴らの中には、地竜のような怪物を使役し、馬のようにまたがっている奴もいた。


「随分手ごわそうじゃない?」

「大丈夫です! もう何回も戦っていますから……瑠璃さん、まずはあの『レッサードラゴン』に乗っているゴブリンを引き付けてください」

「レッサードラゴン……あの地竜のこと?」

「はい! 奴らは前しか見えないので、一直線にしか進みません、一定方向に引き付けてまとめて倒せば……」

「……一石二鳥ってことだね」


 なるほど、参考になる。

 やはり彼女はリン達と同じ、プロフェッショナルのようだ。


「瑠璃さん、これを……」

「……これは?」


 アリスさんは、私に黄色いハンカチのような布を手渡した。


「レッサードラゴンは動いているものに過剰に反応します、これで注意を引き付けてください」

「なんか闘牛みたいだね……わかった、やってみる」


 私は奴らに向かって走り出し、ハンカチを大きく振った。

 すると、レッサードラゴンが逸れに反応したのか、仲間のはずの歩兵たちを吹っ飛ばして、こっちに近づいてきた……って結構早くない!? まずいかも……。


「瑠璃さん! 走って!」

「う、うん!」


 私はハンカチを振りながら、ドラゴンに乗る奴らを引き付ける。

 後ろにいるアリスさんをふと見ると、杖を残った歩兵たちに向けていた。


「大地に眠る植物たちよ、この者たちを縛り付けよ、『プラントバインド』!」


 アリスさんが呪文を唱えると、歩兵たちに蔓が巻き付き、呪文名の通り縛り付けられ、身動きが取れなくなっていた。


「瑠璃さん! こっちに戻ってきてください!」

「Uターンってことね、わかった!」


 私は上手いこと曲がり、アリスさんのところへと駆けていく。

 ドラゴン乗り達は馬鹿正直に私に誘導されていた。


「瑠璃さん! このまま巻き付けている奴らに攻撃を!」

「えぇ!? アリスさんはどうするの!?」

「任せてください! ……『ビルドスカフォード』!」


 アリスさんが呪文を唱えると、私の目の前に床のようなものが出現した。

 私は意図を理解し、それに飛び乗って、それと同時に高く飛び上がった。

 アリスさんを飛び越え、巻き付けている歩兵たちに攻撃を仕掛ける。

 すると奴らは……煙となって消滅した。


一方アリスさんは……。


『大地よ、天高き壁となれ……『ランドウォール マキシマム』!』


 後ろを振り向くと、巨大な土の壁が出来上がっていた。

 すると壁の外側から鈍い音が響き渡る……恐らく、前しか見えない竜に乗る戦隊が、壁に激突しているのであろう。

 激突のたびに消滅しているのか……壁の外側から煙が上がっていた。

 ……どうやら、殲滅できたようだ……あの地竜、知能低すぎじゃない?

 私は消滅を確認し、アリスさんと合流した。

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