告白を断ったら天災級ダンジョンの奥地で放置されたけど、元龍王候補の力を得たので神を越える力を研究したいと思います〜復讐とかざまぁとか考えてないので関わらないで!〜

ネリムZ

第1話 なんでこうなった

 「アメリア、どうしたの?」


 「ちょっと魔術の勉強」


 私はアメリア・アメリカ、【ヌードザモンキー】と言うパーティ所属の魔術士メイジである。

 明日は天災級と呼ばれる程の凶悪なダンジョンに挑むので、久しぶりに魔術本を読んでいたところだ。

 そんな私に話し掛けて来たのはこの孤児院の管理者であるシャル・ニホンだ。


 淡黄色の髪の毛を肩まで伸ばしており、運動不足故か脂肪が胸の方に集中したエルフ族。

 瞳は次縹色つぎはなだいろをしている。

 私とシャルは元々ここの孤児院で育ち、元の先生達が年で引退してしまったので、元々なる予定だったシャルが引き継いだ。

 私はその手伝いの為にシャルと一緒に孤児院に残り、今は冒険者としてお金を稼ぎ、運営の足しにしている。


 本来なら国から補助金が出るのだが、この国ではその制度がないらしい。

 なのでいつも金欠だ。

 最近は私の頑張りもあってなんとか出来ている状況。


 「勉強も良いけど体調管理も大切よ。万全な状態でいかないと。⋯⋯帰って来なかったら呪ってやるからね」


 「ちょ、怖い事言わないでよ。そもそもシャルは呪術を習ってないでしょうが」


 でも確かに寝るべきか。

 今日は寝る事にした。


 翌朝起きるとシャルと子供達が朝食の準備をしていた。


 「あ! アメリア姉ちゃんおはよう」


 「ケンケンおはよう。朝ごはんもう出来てる?」


 「イエス!」


 朝食を食べてから私は孤児院を出る事にした。


 「気をつけてね。本当に」


 「大丈夫だよ。シャルを一人残して居なくならないって」


 「⋯⋯もう」


 そして私はパーティメンバーと合流する為に待合場まで向かう。

 装備はローブに杖とシンプルなモノだ。それに少しだけ安い。

 私達のようなSランクの冒険者ならもう少し高い装備を揃えているところだが、生憎とそこまで貯金が出来ない。


 「あれ? ナキミルだけ?」


 「ああ」


 ナキミル、私のパーティのリーダーをしている大剣使いだ。

 一撃の火力は本当に高いのだが、武器の特徴上小回りが利かないので少しだけ不便なところがある。


 「実は少しだけ早い時間をアメリアには伝えてあったんだ」


 「ほう。またなんで?」


 「そのな。伝えたい事があってさ」


 「うん」


 少しだけ躊躇った様に感じたが、振り切ったのか絞り出す様に声を出す。


 「今回のダンジョンを無事に攻略出来たら、俺と結婚して欲しい」


 「⋯⋯えっと、いつから?」


 「パーティとして活動して二ヶ月程で」


 そっか。そんな前からか。

 私達のパーティは結成してから三年活動している。

 実力もメキメキと伸びて同期なんかあっという間に後ろにおいておく程に。

 今回の攻略はパーティとしての大きな注目の的となっている。


 「嬉しいよ、本当に。でもごめん」


 「⋯⋯」


 「あ、あはは。なんか皆が来る前に雰囲気悪くしちゃったね。この事は忘れて攻略に集中しよ、ね?」


 「そう、だな。その通りだ。俺こそこんな大事なタイミングで変な事言って悪いな」


 「良いよ。気にしてない」


 「⋯⋯」


 嬉しいと思ったのは本心だけど、私は彼を異性感情で見た事はない。

 リーダーとしての素質に尊敬しているし、周りを引っ張っていくスタイルは好きだ。

 でも、それは恋愛的な意味ではなく尊敬に当たる。

 だから彼の告白は断るしかない。


 そして他のメンバー、回復魔術を得意とするマゾ、罠の解除や敵の索敵を得意とするコモノがやって来た。

 ヌードザモンキーは私含めこの四人がパーティメンバーと成っている。

 移動中の時、マゾが小声で話しかけて来た。


 「なんかあった?」


 「いえ、何もないですよ」


 「そう」


 何かを含んだような呟きに一瞬違和感を感じたが、今はそれどころじゃないと気を引き締める。

 ダンジョンへと入り、徘徊するモンスター達を避けながらボスへと向かう。

 このダンジョンは徘徊するモンスターも強力なので、戦っていては消耗する一方になる。


 「さて、到着だな」


 コモノの能力があればモンスターを回避しながら進むのは容易だった。

 流石としか言いようがない。


 「それじゃ、休憩してから行くぞ」


 「おう」


 「分かった」


 「うん」


 コモノ、私、マゾの順番で答える。

 皆で少し休み、万全の状態にしてからボス部屋へと入る。

 中で待っているのは黒龍と呼ばれるドラゴンの一瞬だ。

 ドアを開けただけですごい威圧が体にのしかかる。


 「凄いマナ量。魔術の準備を開始します!」


 私は魔術の構築に取り掛かる。

 相手はまだこちらを見ていないので、そこがチャンスとなる。

 なので一撃で大きめのダメージを与える為に集中する。


 「アタシはね、アンタのことすごいと思ってたのよ。孤児のくせして魔術を勉強してさ、二級魔術士試験にも合格する程の実力者、いずれ一級魔術士にも成れたでしょうね」


 マゾが話しかけて来る。


 「でも、今日でお別れよ」


 ⋯⋯え?


 「僕はなんとも思ってなかったけど、残念だね。さいなら」


 え?

 何を言ってるんだろうかコモノは。

 私の集中力を乱したいのかな? 二人共変な事を言って来る。


 「お前が俺の申し出を受けていたらこんな事には成っていないからな。恨むなら自分を恨め」


 「え、ナキミル?」


 そして後ろに回ったナキミルが私を強く蹴飛ばした。

 重剣士の身体能力は当然高いし、体から光が出ているのでマナで強化してある。

 当然準備していた魔術は途切れるし、私はドラゴンの方に吹き飛ばされた。

 入口とは反対の壁に前から衝突する。マナを全身に巡らせて防御はする。


 「な、なんで?」


 「お前が悪いんだ」


 「待ってよ、何を言ってるの? ね!」


 そしてナキミルは大剣を黒龍に向けて放った。

 それは命中して、寝ていた黒龍を起こしてしまった。

 一番近くに居た私を黒龍が睨んだ。

 その目は私を一瞬で殺せる程の恐怖を秘めていた。


 「⋯⋯なんで」


 そしてボス部屋へと繋がる扉を閉じながら彼らは去って行く。

 なんで、どうして、そんな単純な疑問しか頭には湧いて来ない。

 ただ純粋な疑問に答えてくれる人はおらず、三人は姿を消した。

 追いかけたくても、混乱で体が動かなかった。


 『グガアアアアアアア!』


 「嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ」


 私は死にたくない。シャルともっと一緒に居たい。子供達ともっと遊びたい。

 私が死んだら孤児院のお金が不足してしまう。生きないと。

 出口はある。あそこまで走れば⋯⋯


 「あっ!」


 黒龍の黒く太い爪が私を襲う。

 魔術でシールドを瞬間的に展開したが、そんな物は関係ないとばかりに吹き飛ばされた。

 まだ相手が寝起きで本気じゃない事が幸いして、生きている。

 逃げる為の扉に向かって足を進める。


 「嘘でしょ」


 だけど、それをファフニールは許さない。

 黒色の炎を口に溜めて、それを一気に私に向かって放出した。

 再びシールドを展開するが、そんなのは気休めにもならない。

 身体能力をマナを使って強化してバックステップ⋯⋯ギリギリ避けれた。


 「あ」


 だけど、足場が崩れた。

 なんでダンジョンなんかに地下が存在するのか分からないけど、私はその闇に呑まれていく。

 落ちていく私を黒龍は笑みを浮かべて見ていた。

 攻撃すらしてこない。

 なんだよその、面白いネズミを見るかのような目は。


 狙いは分からないけど、これは黒龍が敢えて行った事だ。

 そうか。もしも殺す気だったら私は既に死んでる。


 魔術を使って着地する。

 目の前が真っ暗で何も見えない。

 光の魔術で周囲を照らす。天井は塞がって帰れそうにない。

 出口があるか分からない。今の私じゃダンジョンを構成している壁などは壊せない。


 「なんで、なんでよ」


 しかもここにもモンスターは居た。

 サソリのようなモンスター、それらが私に向かって来る。

 でも良かった。黒龍のような化け物じゃないし、これならまだ一人でも倒せる。

 食料にもなるし、水は魔術で生み出せる。

 重要なのはここから出る方法。


 闇雲に探しても意味が無い。

 何よりもダンジョンに地下があるなんて前代未聞だ。

 ここには黒龍がダンジョンとして形成する為に放出されているマナに満ちている。

 ⋯⋯ここで修練しよう。

 ダンジョンを壊して脱出出来、そして奴を倒せる程に強くなるまで。


 そうと決まれば修練あるのみ。

 絶対に生き残って帰る。皆の元に。

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