深夜の散歩で起きた出来事

亜未田久志

JKが深夜をうろつく事案


「昨日な、いや今日な」

「なんや曖昧な始まり方しおってからに」

 舞倉姉々まいくらねね舞倉妹々まいくらまいまいが会話している。

 ちなみにこの二人は姉妹ではない。

「違うねん、昨日の深夜11時から今日の今朝12時にかけての出来事やねん」

「めんどっくっさいなぁ。24時表記で生きろ」

「んでな」

「無視するやん」

「缶ビール片手に散歩してたやんか」

 成人済みであるご安心めされい。

「知らんけど、そうなんや」

「そしたら後ろから……」

 しばらく黙る姉々。

「いやはよ喋れや」

「いやタメ時やんクライマックスやんコマンドで言うたら長押しタイミングやん」

「格ゲーでもやってるんかこいつ」

「んでな」

「それ好きなん?」

「後ろからワッ! って声かけられたら知らない女の子やってん」

「ほーん、で?」

「いや怖いやん」

「まぁ……まぁ……こわ……怖いな?」

「んでな」

「それ好きな」

「可愛くない?」

「急になんやこいつ」

「いや『んでな』って可愛くない? ナナチっぽくて」

「ナナチに謝れ」

「誰がなれ果てやねん」

「なれ果てにも謝れ」

「んでな」

「マジかお前」

「その知らん女の子、私を知り合いだと背中だけで判断したらしいねん」

「あー、まあたまにあるよねそういうことね、勘違いやったんや」

「頭おかしない?」

「評価ひどない? 勘違いでそこまで言う?」

「いやいやいや、だって背中だけやで背中だけ、人間後ろ姿の情報なんて50%やんか、50:50で判断するとかミリオネア以外であり得へんやん」

「ミリオネアであり得るならいいやんか」

「ないわー。マジないわー。もう私ガン萎えしたもん」

「ナニが萎えたんやお前」

「下ネタやめてもろて」

「ぶっ転がすぞ」

 妹々は若干グーの構え。

 状況説明。

 語ってるのが姉々、聞かされてるのが妹々。

 二人は女子高生(成人済み)である。

「そもそも深夜におなごが出歩くなやって話よな」

「おなごて」

「想わん?」

「この話オチあるんか、なあ?」

「うわ、オチ求める系クソ関西人や」

「言うとくけどお前も面白くない話をさぞ面白そうに語ろうとしてすべってる系のクソ関西人になりかけてるからな」

「じゃあその女の子の足が透けてた話する?」

「こわ、急に怪談に振るなや、温度差でグッピー一万匹は死んだわ」

「一万匹は言い過ぎやろ、グッピーに謝れや、あと私にも謝れや」

「クソめんどくさいなコイツ」

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深夜の散歩で起きた出来事 亜未田久志 @abky-6102

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