28

シスイside


「あ、えと……私は……ちょっと疎まれているだけなので……本当何もないんです。」

「それは何もないとは言えないのでは?」

「いや、あの……昔からなので……慣れました」

「それは慣れてはいけないことです!」


 湖麦さんの慣れました発言に、思わず大声で反論してしまった。疎まれることに鈍感になるなんて!


 私に出来ることがあるのならと願って話をもっと聞き出すことにした。








 湖麦さんの言葉はポツリポツリと途切れ途切れだったが、だいたいの状況は分かった。


 昔から、何か気にくわないことがあるのかよくハブられるとのこと。理由は自分でもよく分からず、途方に暮れていたらしい。今はもうその時点をも過ぎて何も感じなくなったらしいのだが。


「そうですねぇ……湖麦さんは疎まれることに慣れてしまっているようですし、それならまず私とお友達になりませんか? 一緒にご飯食べたりお喋りしたり。わぁ、楽しそうです!」


 ヒトが一人でいることに慣れる必要はない。人は支え合ってしか生きていけないのだから。まぁ、私がヒトかと言われたらなんとも言えないが、それでもヒトと同じように行動できるので良しとする。


 ──シスイはそう言うが、もちろんシスイは正真正銘のヒトである。人形ではない──


「シスイ様、それだともしかしたら火に油かもしれません。」

「え?」


 ……どうしましょう、私珈夜さんが言いたいことが分かりません! 内心オロオロと焦っていると、紅蓮さんが補足してくれた。


「生徒会長サマはもう少し自分のことに気を配れ。一応生徒会長として有名で、お前さんの行動によってたくさんの人に慕われるようになっているんだからな。」


「確かにそうだねぇ~。皆に慕われるアイドル的存在が誰か一人を特別視すると、それを見て『皆の茨水さん』を望む人が逆上する確率もゼロではないからねぇ~。」

「……何故です?」

「考え方の違いってやつじゃない~?」


「はぁ……あ、じゃあ生徒会室に遊びに来て頂くのはどうですか? そうすれば他の人から見られず、かつ私とお喋り出来ます! ……まぁ、毎回ご足労頂くのは申し訳ないとは思いますが。」


 名案を思いついたと言わんばかりにポンと手を叩く。すると生徒会の皆さんは『まぁいいんじゃない?』と言うように頷いた。


 湖麦さんはトントンと話が進みすぎたことに頭を悩ませてしまっていたようで、こめかみをグリグリとさすっていた。


 しかしその表情は今までで一番緩んだもので、その中でも口元は笑みの形だった。

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