13

ミドリside


「私、何度もシスイ様に聞いたんです。『最近眠れてますか』『お疲れのようですし仕事減らしますよ』『ご飯はそれだけですか』と。でも頑なに『大丈夫です』と返事されてしまって。これ以上深く聞いてくるなと言わんばかりに口角を上げられて……私だけではどうにも出来ないんです。お願いします。力を……貸していただけませんか。」


 珈夜さんの茨水さん崇拝ぶりは変わらない。変わらないからこそ、今にも心配で泣き叫びそうだった。そんな珈夜さんの背中を僕はさすってあげる。


 僕は難しいことは分からないけど、茨水さんの様子がおかしいのはなんとなく気がついていた。


 よく鈍いとか言われている僕にも分かるくらいだから、茨水さんを知っている人は結構分かっているんじゃないかな?


「僕に出来ることがあれば協力するよ~」

「まあ、協力してやらんでもない。」


 も~、紅蓮くんは素直じゃないなぁ~。というか遠回しな言い方、って言う方が正しいのかな? う~ん、難しくて分かんないや。


「で、俺達に協力を求めたとして、まず何から実行していく?」

「それは」


 珈夜さんは何か案があったらしい。しかしそれが言葉として音になることは無かった。


 ガチャ、と開いた扉。今まで話題の中心にいた茨水さんが戻ってきたのだ。僕達三人はお互い目で会話し、一旦この話は終わりだと頷いた。


「……皆さん? どうかされましたか?」


 茨水さんは僕達の間にある微妙な空気感を察知したらしい。が、僕達は知らん振り。すっとぼけ~だね。


「ん~? 何もないよ~」

「ただ生徒会の仕事は多いと愚痴をこぼしていただけだ。」

「……そうですか?」

「うん~そう~」


 紅蓮くんがそれっぽい話題を出してくれたから僕もそれに便乗してみた。茨水さんは怪訝そうな表情を一瞬見せたけど、まあそんなもんか、と納得したようだった。








 日も暮れ、街にポツポツと明かりが灯る時間。生徒会室ももれなく電気を付け始めた頃。最終下校時間もだんだんと近付いてきていたが、僕達はまだ仕事に明け暮れていた。あ~仕事多い~。


「あ、雨だ」


 そんな時、誰が呟いたか分からないけど、雨は確かに降ってきたらしい。最初はポツポツ、しかし数分後にはドドド……と音が次第に強くなっていた。



 ゲリラ豪雨かな、傘は持ってきていたっけ、と呑気に考えていた時、




 パッと生徒会室の電気が消えた。

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