奪われた略奪者

前てんパ

第1話 奪う能力

 この世には固有スキルと呼ばれるものがある。誕生日を迎え、15歳になる子がいる月に行われる儀式によって、固有スキルは判明する。神父によって、そのスキルの名を明かされるのだ。


 スキル、神から与えられるものだ。スキルによって、人間はできることが増える。そして固有スキルは、その名にになると言われている。


 例えば、聖の名を持つ、【聖剣使いせいけんつかい】であれば剣の扱いが長けており、聖剣を使うにふさわしい、清く正しい心になるといった伝承があった。


 そのため、悪い印象を持つ名のスキルを持つ者は街などの場所であればスラム街などに捨てられれ、村などの場所であれば殺される。


 俺は村で育った。だからと言って、俺がスキルが悪い名前である可能性など微塵も考えていなかった。


「ロット、前へ。」


「はい!」


 俺、ロットはこの日を待ち望んでいた。今月には誕生日を迎え、15歳になる。そして誕生月にはスキルを神父様から教えてもらえるんだ。


 どんなスキルになるのか楽しみで仕方なかった。父親と同じ、【農民のうみん】になるのか、母親と同じ、【編み士あみし】になるのか。


「では……む、ロット君、君のスキルは【略奪者りゃくだつしゃ】だ。」


 略奪者?奪う者……ってことか?


「……」


 周りが俺を蔑んだ目で見てくる。あいつは犯罪者だ。そんな声が聞こえてくるほどに。


「君は悪しき名を関したスキルを持った。この意味が分かるかな?」


 神父様はおっとりとした口調で、そう語り掛けるように言ってきた。


「はい。悪しき名のスキルを持つものは悪に育つため処刑されます。」


 今まで教わってきたことだ。俺はそうだったらしい。処刑されるんだ。


 震えはなかった。しかし、妙な気持ちになった。俺は死ぬために生まれてきたのかと。


 ふと、親たちの方をみると母親は泣いていた。父親は母親を慰めているようだった。話しているようだったので耳を傾けて聞いてみた。


「あんな子生むんじゃなかった!あぁ神よ。私をお許しください!神父様!そいつを早く殺してください!」


 ……俺について悲しんでいたわけじゃないみたいだった。むしろ早く死んでほしいみたいだ。


「ロット。こちらに来てください。」


 そこは処刑台だった。神父様は斧を持ち、俺の首に振り下ろした。


 俺の首は吹き飛び、地面に落ちたのか、上に自分の体がまだ見えていた。


 あぁ、死ぬのか。こんな簡単に。




 お前はそんな簡単に死ぬのか?死にたかったのか?


 そんなわけないだろ。生きたかったさ。でももう死んでしまったんだよ。


 だったら、そのスキルで奪えばいいだろう?こいつらから。


 そうだ。そうなのか。俺は【略奪者】だ。奪う前に死にたくない。こいつらは俺から奪ったんだ。


「《強奪》」


 固有スキルを手にすると技が使えるようになる。その技名は脳裏に浮かび、その技名っを発することでスキルが発動し、技を扱える。


 この《強奪》という技は対象のものを奪うといった効果を発揮する。


 今回の場合、ロットは神父の命を強奪した。


 ロットの首が時を巻き戻すかのように、戻った。そして神父が血を吐き、倒れた。


「あぁ……俺は生きたかったんだな。」


 周りから悲鳴が上がる。


「神父が!あいつ!何かしやがった!」


 誰かがそう叫んだ。


「《強奪》」


 俺は周りに居た奴らの速さを奪った。もうこいつらは動けなくなった。


「《強奪》」


 筋力を奪った。


「《強奪》」

「《強奪》」

「《強奪》」

「《強奪》」

「《強奪》」

「《強奪》」

「《強奪》」

「《強奪》」


 ……もう奪えない。


 全てを奪った。この場所から離れよう。






 スキルのせいで苦しむことを繰り返さないように。






 悪い奴らから全部を奪おう。それで平和だ。

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