奴の犯行
しげふく
第零の犯行
ねぇねぇ知ってる?
最近、変な奴が街で人に声かけてるんだって。
しかも、奴は男にしか声をかけないんだよ。
声をかけてどうするかって?
自分の家に言葉巧みに誘導するんだってさ。
ゲームの話をしてる子になら、
『家に新作のゲームがあるから一緒にやらないか?』
とか、
服の話をしてる子なら、
『ファッションデザイナーをしてるんだけど興味ある?』
とかね。
もちろん、そんな奴にのこのこついて行く子なんて滅多にいない。
そんな警戒している人間を最終的には説得できるのが奴なんだよ。
奴がここ最近、口説き落とした相手について教えてあげよう。
あれはある日の昼過ぎ頃だったかな?
奴はターゲット、ここからはS君とでも言おうか。
S君を見つけたんだ。
S君は電話越しに誰かと喧嘩していたね。
「はぁ?!来れないだァ?ふざけんなよ、ドタキャン何回かませば気が済むんだよ、このアマ!」
あの感じだと、電話相手は彼女だったんだろうね。
「マジで今日という今日は──っておい!もしもし、もしもし!っ、チクショウ!」
めちゃくちゃにキレながらスマホから耳を離したS君。
そこに奴が話しかけた。
『そこの君、どうしてそんなに怒っているの?』
ってね?
「あ”?今機嫌悪ぃんだよ話しかけんなクソが。」
S君は可愛く怒りながらそう言った。
奴はこういう男の扱いには慣れてるんだよ。
傷つき、愚痴の溜まった子は誘導しやすいことも知ってる。
つまりS君は奴にとって最高にいい獲物だったんだよ。
『僕なんかで良ければ話を聞こうか?』
そう言いながら奴はS君の肩にそっと手を置いた。
S君はその手を振り払い、立ち去ろうとしたんだよ。
まぁそんなの奴が許すはずがない。
奴は立ち去ろうとするS君の腕をがっしりと掴んだ。
『心配なんだよ、君のことが…』
っていかにも心の底から心配してますって顔でS君のことをじっと見つめるんだ。
こんな風に少し工夫すれば、傷ついた男なんてあっさり引っかかってしまうものだよ。
S君は振り返り、
「話聞いてくれんなら、あっち行こうぜ。」
と奴の手を引いて飲み屋に向かった。
後は簡単さ。
ターゲットに酒を飲ませ、愚痴を吐き出させ褒めちぎってあげる。
それだけでターゲットは奴を信頼しきってしまうんだ。
そして奴は酔いつぶれたS君を小脇に抱えて自宅へ帰る。
─────────────────────……
「確かこんな感じだったよね、僕達の出会いって…」
奴が俺を見下ろす。
「ね?”翔君”。」
「っ…!!…、!!」
声の出ない中、必死に奴に叫びかける。
「ごめんね、手も足も取っちゃって…
でもそうしないと、翔君逃げちゃうでしょ?だから…」
達磨姿も可愛いよと、俺の身体を抱きしめ持ち上げた。
無い手足でもがいてみるも、奴が離すことは絶対に無い。
「あぁ、そんなに暴れないでよ…暴れれば暴れるほど、興奮しちゃうから♡」
はぁはぁと吐息をこぼしながら恍惚の表情を浮かべる
この数十日で何度も見てきた顔だ。
嫌だ…気持ち悪い
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い…
なんでこんな奴に気を許してしまったんだろう。
俺は自分を憎んで恨んだ。
「なんだか辛そうな顔してるね…翔くん。」
「あっ!僕とエッチしてないからかな?
ごめんね〜君とお話するのが楽しくて忘れてたよ。」
すると奴はベッドに俺を寝かせ、腰から尻を撫でた。
「大丈夫、今からしてあげるから。とびきり気持ちいいのをね♡」
冷たいローションが俺の身体に落ちてくる。
奴は俺に塗り広げ、その指を俺の中に入れた。
「っ!?…あっ!!?!…んぁ、んーーーー!!?!」
俺はこれでもかと身体を捩らせ、逃げようとする。
「じっとしててって、そんなに暴れたら───」
奴の指がズルリと抜け、俺はベッドから落ちる。
チャンスと言わんばかりに俺は肩を動かし這い逃げる
奴が何もしない…
諦めてくれたのか?それなら好都合だ。今のうちに…
「あーあ…翔くんは悪い子だなぁ…
いい子にしてたらご褒美あげようと思ったのに…」
「残念。」
その言葉が聞こえたと同時に背中を思い切り踏みつけられた。
「かはっ!?!あっ…あがっ……!?!、!?!」
呼吸が出来なくなる。
息が…空気が吸えない。
そんなこと奴はお構い無しに俺の中に肉棒を押し込んできた。
「あぁぁあ!?!はぁぁ…かはっ…あっ……/////」
俺の弱い所を擦られ反応してしまう。
「翔くんは他の子と違って素直になってくれると思ったのになぁ…」
「もう待てなくなっちゃった…バイバイ、翔くん。」
そう言うと、奴の手が俺の首を思い切り掴んだ。
ギリギリと音を立て首が締まっていく。
「あ…あ…くるっ…ひぃ……や……だぁ…ぁ……」
意識がどんどん闇の中へ落ちていく。
俺は死ぬ事を理解した。
───────────────────────
心臓の音が聞こえなくなった。
死んじゃったか…
なんでみんなあんなに抵抗するんだろう…
諦めて委ねてくれた方がやりやすいのに…
僕はもう動くことの無い子から自分の肉棒を抜き、立ち上がる。
「あれ?名前…この子なんていったっけ?忘れた…」
「ま、いっか!」
一通り体を洗い流した後、服を着て気分転換に出かける。
外は気持ちいい。
大好きな男の子で溢れているし、どの子も素敵でこの子だ!と決めてもつい目移りしてしまいそうになる。
次はどの子にしようかな…
そんな事を考えていると、
ドンッ!
「あっ、すみません!」
無精髭を生やしたスーツの男性にぶつかってしまった。
「いえ、こちらこそ。」
そう言うと彼はそのまま立ち去って行った。
ああいうタイプの子はまだ声をかけたことは無い。
だけど………
「ちょっと、いいかも♡」
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