転生少女はプリンセスになりたいのです

細蟹姫

プロローグ

プロローグ 転生少女はプリンセスになりたい

 私には夢があった。

 キラキラと輝く『夢の国』のお姫様になりたいという夢。

 強く、優しく、気高い、誰もが憧れるプリンセスになりたい!

 年月を掛けて強くなっていく私の願いとは裏腹に、「可愛いね」と言ってくれていた周囲の反応はどんどん冷ややかになっていった。

 何より絶望だったのは、どれだけ勉強して知識を身に付けても、どれだけ武術を習おうとも、教養や美徳を学んでも、プリンセス彼女たちは物語の中の人物で、私の現実には貴族社会も王子様も存在しなかった事。

 冒険も使命も何一つ存在しないつまらない世界で出来る事は、精々テーマパークで雰囲気を味わうことくらいだった。

 憧れた物語がいくら輝こうとも、現実での私が秀才の域を出る事は無かった。


 …という、前世の記憶を思い出したのは、うたた寝をしてしまいそうな穏やかな陽気の、ある日の午後の事。


 気がふれたわけじゃないわ。大丈夫。私の名前は、プレセア・オリバレス。

 宰相であるお父様、シモン・オリバレスの長女。

 お母様譲りの白銀の髪とお父様譲りの緋色の瞳を持って生まれた私は、通りすがる数多の人を振り向かせられるほどの美貌を持っている。

 『誰もが一度は恋をする少女』そんな噂が絶えない。それが私。


 …やっぱり気がふれているのかしら? 

 どう考えてもこの自己紹介、普通じゃないわね。

 でも事実なのよ、仕方が無いわ。それに大事なのはそんな事じゃなくて…


 鏡に映る自分の顔が、悪戯な笑みを浮かべて私を見返している。

 無意識に口元が緩んでいたらしい。

 でも、それも仕方がない。やっと努力が実を結んだんだもの。

 あぁ、諦めず頑張ってよかった。


 この世界には貴族社会がある。王子様もいる。

 つまり、私の思い描くプリンセスにだってなれるってことよね!!


 強く、優しく、気高く、美しい、誰もが憧れるプリンセスになる。

 私はこの世界で、絶対に夢をかなえて見せるわ。




――――――

お読みいただきありがとうございます。

新連載です。

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