第129話 古龍の古代遺跡⑥

シュカと別れた私は最深部へと続く長い道を歩いていた。


ここまでの道でモンスターとのエンカウントはない。


ただただ長い静かな道だ。


シュカのいた部屋より奥の道だしボス以外であれより強いモンスターが出て来られても困るけど。


とまぁそうこうしているうちに最深部へとたどり着いた。


私は勢いよく扉を開ける。


中は広い空間になっていて真ん中にキラリと光る水晶が設置されている。


「とりあえずこれに触れればいいのかな」


私は水晶を触ってみる。


すると周りに結界が展開され、空から一匹の巨大な龍が現れた。


「あなたがここのボス?」


『いかにも。私の名前はリュカ。


この遺跡のサイン神武にて探索者を待ち受けるもの』


「じゃああなたがシュカの妹さんってことでいいのかな?」


『姉上を知っているのか!?


姉上は今どこにいる!?』


「この部屋の前の部屋だよ。」


『…無事だったのか。安心したぁ…っじゃない!


今は姉上のことなどどうでもよい!


貴殿がここを突破するに値するか試させてもらおう!』


そう言ってリュカは私の前で羽を広げ空中に浮かぶ。


羽を羽ばたかせるたびにものすごい風圧が来る。


それに…


リュカから放たれる威圧感が半端ない。


これは生半可な覚悟じゃ勝てないかもしれない…。


とりあえずリュカのステータスを確認する。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


リュカ(デミエンシェントドラゴン)


LV300


ドラゴン/人間/人工龍


スキル


魔法耐性(大)


物理耐性(大)


攻撃反射


アルティメットスキル


遺跡の守りビト


最恐の人工龍


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


アルティメットスキル…?聞いたことないスキルだ。


新要素だろうか?


というかレベル300って…。


現時点でのトッププレイヤーが束になっても勝てなさそうだが…。


さてどうしようか…。


私はリュカを見ながら対策を考える。


向こうもこちらの様子を伺っているのか攻撃はしてこない。


今のうちに攻め方を考えたいところだけど…。


相手は空中。


距離的にはスノウのコールドインフェルノが届く位置だ。


しかし相手には耐性に加えて反射のスキルがある。


安易に攻撃するのは危険だ。


反射で攻撃がさらに強くなって跳ね返って来たらまずい。


ならどうすればいいか…。


反射…反射か…。


私は少し考えてスノウ達を見る。


みんなは私の指示を待っている。


「…あれこれ考えても仕方ないよね。」


私はそう呟くとインベントリから龍殺剣を取り出す。


ドラゴンを倒すのならやっぱりこれだ。


本来なら私のステータスじゃ装備出来ないけど…。


このドレスがそれを補ってくれる。


『その剣からは嫌な気配がするな』


「まぁ龍を確実に倒すための武器だからね。


…待たせたね。」


『全くだ。私をここまで待たせたのは貴殿が初めてだぞ。』


「私もあんなに待ってくれるとは思わなかった。」


『先手は挑戦者に譲ると決めている。


まぁ挑戦者などほぼ来ないが。』


「ならお言葉に甘えて…!


スノウ!」


「きゅ!」


スノウは私の合図で辺りを氷で覆う。


『スノウユニコーン…人間たちの話では聞いていたが…


ここまで強力とは…』


リュカは感心しているがこれくらいだと思われては困る。


「ルシェリ!」


「ルル~!」


次はルシェリのパラライズシャワーを辺り一面にばら撒く。


『麻痺か。いい作戦だが私には隠れた能力として《即時状態異常回復》がある。


それくらい問題ない』


「隠しスキル!?…流石レベル300…」


流石にステータスに表示されないスキルは想定外…。


ルシェリのパラライズシャワーが効かないとなると…。


今までの作戦は通用しないってことになるが…。


さてどうする?どうすればレベル300を突破できる?


私は脳をフル回転させる。


…そう言えば少し前にお姉ちゃんがこう言ってた気がする。


『ゲームにおいて絶対に突破できないなんて状況はない。


必ずどこかに必勝法がある』


必勝法…。


『どうした?動きが遅くなっているのではないか?』


私は攻撃を避けながらもう一度リュカを観察する。


相手に弱点らしい弱点はない。


しいて言うなら尻尾で攻撃をするタイミングで一瞬止まるくらいだけど…。


ほんの一瞬。


そこを突いて攻撃なんて…。


いや。


「見えたよ。勝ち筋。」


私はニヤリと笑うと反撃の準備を始めるのだった。




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