第43話 探し人と色欲

紺に呼び込まれた私は気が付けば不思議な部屋へと連れてこられていた。


ここは遮断する魔法か何かが掛かっていて周りには声が聞こえないくなっているらしい。


よく分からないけどスノウを召喚しようとしてもできなかったし。


さっき思いっきり叫んでみたけど何かに声が弾かれた感じがした。


「急にこんなところに連れてきてしまってすみません。


私があなたを呼び込んだ狐族の姫の紺です。


ちなみにここは私が管理する神社です。」


「私はユズ。冒険者…とでも言っておこうかな。


それで?私にお姉さんを助けて欲しいってどういうこと?」


「姉…と言っても義理の姉なんですけど…悪魔に捕まってしまったんです。


私を助けた代わりに…。」


「悪魔に?」


「はい。あいつは自分のことを色欲の悪魔…と言っていました。」


色欲の悪魔…神話とかでは人を誘惑したりして食べたりするらしいけど…


そのお姉さんは無事なのかな…?


ゲームとはいえこのFWOでは死んだNPCは戻ってこないし…


出来る限り助けた方がいいと思う。


「どうでしょうか…?手伝ってくれませんか?」


「わかった。お姉さんを助けるの手伝うよ。その悪魔がどこにいるか教えてくれる?


「ありがとうございます!あの悪魔はこの神社から南に行った大きな屋敷に陣取っています。


気を付けて行ってきてくださいね。」


紺がそう言うとマップに目印が表示される。


どうやらここにその色欲の悪魔がいるらしい。


「じゃあ行ってくるね。」


そう言って私は神社を出てマップの目印の場所へと向かった。


ーーーーーーーーーーーーーーー


「ここかぁ…」


私は立派な屋敷を見上げてそんなことを呟く。


「スノウ。乗せてくれてありがと。」


「きゅ~」


スノウにお礼を言って頭を撫でた後もう一度屋敷を見る。


「…悪趣味な屋敷だね。」


なんか気味の悪い装飾がたくさん施されてるし変な鳴き声するし…


これがゲームじゃなかったら速攻帰ってたわ。


…とそんなことは置いといて紺のお姉さんを探さないと。


とりあえず私は屋敷の中に入った。


「とはいえこんな広いとこのどこから探せばいいのか…?」


中に入ってみると大きなそこは広い空間になっていた。


扉もたくさんあるし全部探すのは骨が折れそう。


「まぁでも騒ぎを起こせば起こせばだれか出てくるか…


スノウ!ブレイズブリザード!この部屋壊し尽くしちゃって!」


「きゅうううう!!!!」


私はスノウに頼んで無造作に攻撃をしてもらう。


これで敵の親玉が出てきてくれればいいんだけど…。


『ちょっと大きな音出してるの誰!?お楽しみ中だったのに!』


そう言って怒りながら出てきたのは羽と角を生やしたほぼ全裸の恰好の女だった。


特徴から見てこいつが色欲の悪魔で間違いないだろう。


…太ってるしおばさんだし色気は微塵もないけど。


「あなたが色欲の悪魔で間違いない?」


『そうよ!私が色欲の悪魔!あなたどういうつもり?人の家に勝手に上がり込んで暴れるなんて…


常識ないの?』


「…そんなほぼ全裸でなおかつ人攫ってる人に常識問われるとは思ってなかったわ。」


『うるさいわね!とにかく罪を償いなさい!』


「スノウ。」


「きゅ」


『て、手と足が…』


攻撃してこようとした色欲の悪魔の手と足を凍らせる。


これで派手な行動は出来ないだろう。


「さて…紺のお姉さんはどこに居るのか教えて貰いましょうか?」


『し、知らないわ…』


「紺はあなたに攫われたと言っていたんですが?白を切るつもりなら顔も凍らせますよ?」


『分かった!話す!話すわよ!その紺とかいうの狐族の姫でしょ?


あいつと一緒にいた女なら贄として魔神王様に献上したわ。


魔力量が多かったから今頃魔力を吸われてるはずよ。』


「今からでも間に合うの?」


『あなた…魔神王様に挑む気!?辞めときなさい。勝てっこないわ。』


「そんなこと言われてもね…」


その魔神王とやらを倒さないとクエストクリアにならないのなら倒すしかない。


紺のお姉さんも助けないといけないし。


「その魔神王とやらの場所を教えて。」


『…ここの屋敷の奥にある転送陣から魔神王様のいる宮殿に行けるわ。


まぁそこにいるのは御分身体だけなんだけど。


万が一にも倒されたら贄は解放されちゃうかもね。』


「ありがとう。じゃあね。」


私は色欲の悪魔から情報を聞き出すとその場に放置して奥の部屋へと進むのだった。


その裏で色欲の悪魔はポリゴンとなって消えていった。











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