類まれなる美貌と魔法の才能を持ち、皆に祝福されながら王子と結婚。そんなパーフェクトな人生を送っているのが、本作の主人公……の、妹です。
一方、主人公セレスティアはと言うと、妹とはちがって魔法は使えず、そのせいもあって妹からは虐げられ、両親も見ないふり。
そもそも妹と結婚する王子だって、元々はセレスティアの婚約者だったにも関わらず、妹に横から奪われたのです。
なのに誰一人として助けないのはもちろん、聞こえてくるのは嘲笑の声ばかり。
そんな中セレスティアは決意します。家も国も捨てることを。そして、この身ひとつで幸せになることを。
そうだそうだ。こんな酷い家族や国からはとっととおさらばして、どうか幸せになって。
しかしそんな読者の思いも虚しく、国を捨て向かった先でも、彼女を待っていたのは苦しい現実。このまま苦難ばかりを味わった挙げ句、彼女の幸薄い人生は閉じてしまうのか。
いえいえ。いくらなんでも、運命もそこまで残酷ではありません。
彼女の運命を変える救いの主の名は、リュオン。セレスティアがこれまで挙げた不幸に加えて、ダメ押しとも言える不運に見舞われた時に出会ったのが彼でした。
しかしこの出会い。不幸のどん底の時にたまたまいい人に出会ったなんて棚ぼた的な話しで片付けられるものではありません。
実はセレスティアは、それだけ過酷な人生を送っていたにも関わらず、健気で優しい行いをやってきていました。そんな彼女の健気さが、意地悪な運命を覆すのです。
もちろん、セレスティアの行いが魅力的に書かれるのは、これ以降も同じです。
単に、不幸な目にあったから幸せになるだけじゃない。どんな時でも、誰かのために何かできる。そういうところがしっかりと書かれているからこそ、読む人の胸を打ち、幸せになってと思うことができる。そして、本作のヒーローポジションであるリュオンがセレスティアに抱く思いも、大いに共感することができるのです。
幸せになる。そんな彼女の願いが叶うのを、応援しながら見守っていきましょう。
美しくて優秀、そして意地悪な双子の妹に虐げられながら生きてきた伯爵令嬢のセレスティア。
両親も庇ってはくれずに、ついには婚約者まで奪われたことでセレスティアは家族と決別することを決意。
セラと名を変えて国外に逃げ出したのですが、そこで素敵な出会いがありました。
路頭に迷っていたセラが出会ったのは、昔一度だけ会ったことのある青年リュオン。
彼の紹介でお屋敷に住み込むことになり、さらにはセラの隠されていた力も発覚して、人生の大逆転が始まるのです!
虐げられてきた女の子が実は凄い力を持っていたという姉妹格差ものですが、本作の見所はなんと言っても、リュオンをはじめとするセラが出会う人々。
猫になってしまう呪いを掛けられた伯爵家の長男や、兄弟仲を拗らせた弟。事情を抱えた訳有りの家族ですけど、セラは助けてもらった恩を返すため体当たりで彼らとぶつかっていくのです。
そんな真っ直ぐなところが、セラの魅力なのですよね。
そしてリュオンも、この人セラのことが好きすぎるでしょ!
会話の一つ一つに凄くキュンキュンさせられ、読んでて幸せな気持ちになりました。