23. 気に入らない人 ※セレスティアside
☆今回から3話、視点が変わります☆
☆
「今回はうまくいきましたわね……。これで、残るはアリスだけよ」
「それは良かったですね。ですが、これ以上はもうお付き合いできません。
あとはご自身で計画を進めてください」
ソフィアがトラウマを植え付けられた日の夕方、バルケーヌ公爵家にあるセレスティアの私室ではこんな会話が交わされていた。
しかしその会話も続かず、公爵令嬢の私室としては質素な様相となっているこの部屋から、侍女が部屋を出よう扉に手をかけていた。
しかし、彼女は床に崩れ落ちることになる。
「あら、私に逆らうつもりかしら? 私は貴女の心臓を止めることだって出来ますのよ?」
「もうしわけ、ありません……」
胸を抑え、痛みに耐える侍女に歩み寄るセレスティア。彼女のサファイアよりも深い青色の瞳は、ひどく冷え切っていた。
ちなみに、先の言葉は偽りであり、事実でもあった。
今は闇魔法による幻覚で激しい胸の痛みに襲われている侍女だが、その幻覚によって直接命を奪われることはない。しかし攻撃魔法としての闇魔法に抵抗することも出来ないから、セレスティアが殺意を持てば命を失うこともあり得る。
そのことに気付けない侍女は、涙を流しながら許しを請うことしかできない。
「分かればいいわ。あなたは唯一の私の味方ですもの」
「はい……」
バルケーヌ公爵家の長女として生を受けたセレスティアだったが、今の彼女に味方と言える味方ははいない。
表向きは味方のように振舞っている者たちは、脅しによって従えているだけなのだから。
生まれは恵まれている彼女は、お世辞にも恵まれているという状況ではなかった。
「1つの属性しか使えない無能の分際で偉そうにしないで頂戴」
「ほんと、悪魔みたいよね。紫の髪に紫の瞳って」
「王子の婚約者になれなかったのはお前の魔法の力が弱いからだ」
「お前は公爵令嬢だというのに、伯爵令嬢でしかないソフィア嬢は5つも適正があるのだぞ。我が家の恥だとは思わないのか!」
「ソフィア嬢が私の娘だったらどんなに良かったか」
そう、公爵家の長女とは思えないひどい言われに扱いを受けていた。
こうなった原因はセレスティア自身の態度にあったのだが、彼女自身が気付くことはない。
しかし周囲の者達は知っていた。
セレスティアはすぐに勉強を投げ出し、努力をしようとしない。
唯一真剣に学んだ闇魔法だって、使用人を脅すための道具に使うだけ。
そんな態度を取るものだから、彼女には誰も寄り付かなくなっていた。
しかし噂というものはセレスティアの耳にも届いていた。
(ソフィアがいなければ、アリスがいなければ……私はこんな惨めな思いをしなくて済んだのに)
ソフィアやアリスを称える噂を聞くたびに、妬み……そして怒りは増していった。
そして思いついた。
「そうだわ、ソフィアを脅してアリスとの縁を切らせましょう。出来るだけ無礼なほうがいいわよね。
公爵令嬢に対する無礼、修道院送りになるわね。ええ、完璧よ」
まずはソフィアを不幸に陥れる計画を。
そして、学院内でソフィアとアリスが話しているタイミングを狙ってトラウマを植え付けようとした。
しかし……。
(どうして魔法が効かないのよ!?)
計画は失敗に終わった。
しかし、同時にとある人物に一目惚れした。
(ああ、私もレオン様にあんな風に大事にされたいですわ……。今の婚約者なんて比べ物にならないくらいの美男だなんて、私にお似合いよね)
そんな自惚れをしてしまい、ますます盲目になったセレスティアは次の計画を思いつく。
ケヴィンにソフィアとの婚約を破棄させるという計画を。
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