【完結】裏切り者に花束を-異端能力デスゲーム

篁久音

第:0

 質素なカーテンを閉め、光に惑わされる騒々しい街と自身を隔絶する。僕は、惑わない。

 壁際にポツリと置かれた鏡が僕の頼りにならない体を映し出す。黒いダッフルコートに紺のジーンズ。冬場の一般人の服装としてはなんの問題もないだろう。だが、踏み折られた枝に似た細い腕はおよそ常人のものではない。上手く誤魔化せるといいが。


「今度こそ、僕は義父さんに認められる」


 空虚な部屋の中でベッドに腰掛けた僕は睡眠薬の錠剤を水と共に飲み込んだ。プラスチックのコップが僕の手から離れ、床に転がる。

 プラスチックのコップを拾い、艶美な銀の流し台に置いた頃には既に意識は朦朧とし始め、倒れ込むように僕はベッドへと身を任せる。

 大学からの帰り道、人気のない路地で攫われた一般人に僕は本能に抗うことなく瞳を閉じた。


 今回も僕の役割は【裏切り者】だ。

 まだ見ぬ君たちへ、僕は心から君たちの全滅を願う。

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