第14話 たこ焼きと、謎の少年と、シルバー王国と

「…おい、あの子」

「…ああ、近衛騎士の副隊長をボコボコにした」

「…ユニークスキル持ちだとか」

「おっかねぇな…」

どうも、初戦の相手が想像以上に残念だったせいで、試合で相手を煽り、イきりまくった結果、帝都民にドン引きされているニアです。

…普通にワンパンKOで終わらせとけば良かったね、これ。

まあいいや、過ぎたことは忘れよう。

それよりご飯にしよう、闘技場の周りには出店だらけだ。

…ふむ、あっちからいい匂いがする。

私は匂いつられたとある出店の一つの前に止まる。

「たこ…焼き?」

出店の看板にはたこ焼きと書かれ、そこには赤い八本足の生物が…。

…まさか、この気持ち悪い生物を食べるの?

と、そこで思い出す、この食べ物、異世界の知識の中にある。

そのまさかだ、タコを包んで焼いて食べる料理らしい…。

「あの、一つください」

好奇心には勝てなかったよ…。

お金を払い、商品を受け取る。

蓋を開ければいい匂いとともに、まるい物体が六つ。

…女は度胸よ、ニア、いざ!


―パク


「!?あふ、あふ、あふい!」

これすごく熱い!

何よこれ!まるでメルトダウンした炉心みたいな熱さしてる!!!

「ほら、水」

「…あ、ありがと!」

手渡された飲み物を一気飲みする。

…ふ、ふう助かった。

…ん?

…んんん?

「…あの、助かりましたけど…どちら様で」

飲み物を手渡してきたのは…黒髪碧眼の少年…どなた?

…あれ、でもなんかどことなく、私に似ているような。

「僕かい?名乗るほどのものでもないよ」

私に似ているといった手前、自画自賛気味になってしまうが、かなりの美少年?だ。

「は、はぁ…」

「あ、でも君とは結構近い血縁関係にあるね」

「…いや!え!」

血縁関係!?

「君の父親、大勇者フリッツは僕のおじさまだね」

…ということは。

「…いとこじゃないですか」

「まあ、そうなるね」

そういえばお父様の出身って確かシルバー王国じゃないんだったけ、それ以外は謎だけど。

…お父様…まさか、帝国出身。

「ところで、その『たこ焼き』どうだった?」

いとこを名乗る少年が問うてくる。

「…え、いや、熱すぎてよくわからりませんでした」

「ならもう一つ食べてみるといい」

「…え」

「何だい?食べないのかい?」

「…いや、その」

さっきは勢いで言ったけど冷静になると、ちょっと…。

いや、しかしこのまま捨てるのはいくら何でも…。

…しょうがない、ここは勇気を振り絞って。

私は再びたこ焼きを口に放り込む。

…うん、あれ、普通においしい。

「…おいしい」

「そうだろう、なにせ僕が広めたからね」

…え?

…僕が、広めた?

この料理は異世界の料理、それを広めたというのは…。

異世界の情報を入手している可能性が高い帝国で、その情報に触れられるのは…。

「あなた、何者?」

かなり帝国の中枢にいる可能性が高い…!

「名乗るほどのものじゃないと言っただろう?…じゃ、またいずれ」

「…」

そう言って去っていく少年。

…彼、恐らく、かなりの…強者。

なんとなく会ったときから嫌な予感がしていたが…。

最後…一瞬だけ『能力』を発動させていた。私にだけわかるように。

フーデリなんかと比べ物にならない。

「…はぁ」

…何者だろか?…もしかして…。

私がそう考えようとした時。

「おい、聞いたか!シルバー王国の王都が!」

「なんだ、そんなに焦って…」

「壊滅したんだってよ!」

「…は?嘘だろ…」

「ほら、さっき号外で…」

…え?

王都が…壊滅!?







シルバー王国王都。

大陸でそこそこの規模を誇る国家の首都が今、燃えていた。

「クソっ、こいつは…」

俺は大剣聖クルト。

それは突然だった。城で会議していたら…。

「大剣聖というからには期待したが…この程度か…ワレは悲しい」

ここは崩壊した城。

俺の目の前にいる魔人。

身長は3メートルほど、まるで人型の甲虫のような外見

魔王軍の大幹部の一人「暴食」だ。

「クルト!何をしておる!さ、さっさとあ奴を!」

「陛下!危険です下がって…」

俺がそう言おうとした瞬間、

「ほう、貴様がこの国の長か」

いつの間にか奴が陛下の後ろに…まずい!

「..な、ひい」


―ガシ


陛下の首をつかみ持ち上げる「暴食」。

そして。

「では、ワレの糧となれ」

「や、やめ、がぎゃああああああああああああああ」

「クソっ」

奴は、暴食は陛下を頭から…食いやがった。

「げふ、なかなかの美味であった」

いかれた野郎、しかしそれ以上に強い。

前のこいつはここまで強くはなかったはずだ。

今は…いくら切りつけようとその甲殻に傷一つつけられない。

「ワレはこれで、大賢者、大聖女、そして王を食たことになるなぁ、ふははは、やはり強者や権力者はうまい!」

…そう、俺が駆け付けた時にはすでに勇者パーティーの半分が食われていた。

「さて、貴様はどうする?」

「どうするもこうするも…貴様をここで討つ!」

「ならかかってくるがいい、ふはははは!」

くそ、こんな時に、ニアがあの、驚異的なユニークスキルを持っているニアがいれば…。

…は、ニアは俺たちに愛想尽かして出ていったんだ、今更頼るとか虫が良すぎるか…。


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