第154話 中堅①
『両者、搭乗‼』
「
司会のオトヒメが合図すると
ここまでは前2試合と変わらない。
違うのは、前2試合では両方の選手が 〔
「
カッ──!
光が消えると飴細工は金色の金属に変化。それはオルジフの体を包む甲冑と、さらにその背から生えた全高5メートル強の直立するドラゴンの骨格と、そのドラゴンの持つ斧を形成していた。
「
〔
以前アキラたちと冒険した時にオルジフが装着したアウルーラにはなかったものだ。オルジフがパワーアップイベントをこなし、原作どおりにアウルーラが進化した結果だ。これでアウルーラは自力飛行能力を得た。
『両者、用意はよろしいか⁉』
「おう、いつでもいいぜ‼」
『こちらも、準備万端です』
オトヒメへの返事で、オルの声は変わらないのにクライムの声だけスピーカーを介した音に特有の響きがあった。
オルジフの乗る
オルジフが
〔
全高5メートル、10頭身で西洋の板金甲冑を思わせるスタイリッシュなボディは、このゲームの自機ペイント機能を使ったクライムによって
また、その機体はサラリィが昨日アキラとの地稽古で使っていたのと同じ機械製の空中騎乗物、空飛ぶ円盤の形をした 〔
なお、召喚演出によってヘリで運ばれてきて上空から降下した機体が
『それでは中堅戦! ──開始じゃ‼』
ジャーン‼
オトヒメが
球形をしたそれは選手たちが転移させられた先の試合用空間を映しだし、観客から両選手が良く見えるように両選手の距離が開いた場合には画面を2つに割って選手周辺を拡大表示する仕組みになっていた。
そして今、そこに映る戦場は──
「地下大空洞、か」
四方のみならず上下も岩によって塞がれた空間。地中にある、5メートルの巨大メカが空中戦をくりひろげるのに充分な広さを持った空間だった。
「ドワーフのオレに気を回してくれたのかね」
大空洞には梯子や橋が縦横に走っている。オルジフの言うように伝承や創作上で鉱業と結びつけられるドワーフの住処になっていてもおかしくない。
『造りが近代的で
クライムの言うとおり、ここの人工物は現代的な科学技術で作られたと思しき様式をしている。地中なのに視界が良好なのも、あちこちに電灯がついているからだ。現実世界で実用化された唯一の有人操縦式人型ロボットであるSVが景色に良く馴染む。
『双方に合わせて選んだステージじゃ!』
「ほお」
『そうでしたか』
『そんなことより2人とも、しゃべくっとらんでとっとと闘わんか! ゴング──じゃなくて、
「うるせぇな。地形を確認してたんだよ」
オルジフが試合開始と同時に飛びださなかったのは、下手に飛ぶと梯子や橋に激突すると判断したためだった。
それら障害物の密度は決して高くないが、思いのほか邪魔っくさく感じる。ぶつかるだけでダメージを受けるオブジェクトは、前2試合にはない要素だった。
『では、そろそろ始めましょうか!』
クライム機アヴァントが先に動いた。それを乗せた
「おっと」
アウルーラの龍の後脚が床を蹴り、オルジフの体が後退して橋から落ちる。そして
『クッ……!』
効果はてきめんだった。クライムは橋の上を通過すると、橋の裏に隠れていたオルジフに攻撃するでもなく、橋から離れていって近くに構造物のない場所で停止した。
「ずいぶん及び腰じゃねぇか」
『慎重と言っていただきたい』
「空中騎乗物による他力飛行は、自力飛行より小回りが利かねえからな。橋のすぐそばにいるオレに攻撃しようとすると橋に激突しかねんよな。騎乗物が壊れかねんし、壊れなくても少なくともスキはできちまう」
『やれやれ。一発でバレましたか』
「どうやら地の利はオレにあるな!」
アウルーラの翼で自力飛行しているオルジフは、クライム機よりも器用に障害物を激突をさけてスレスレを飛べる。
クライム機が障害物に気にしてまごついているところを攻撃すれば容易に勝てるということだ。邪魔と思った障害物ががぜん、頼もしく感じる。
オルジフは橋の上に着地した。
クライムからの再攻撃を待つ。
『こりゃ、オルジフ選手! 消極的態度は感心せんぞ! 剣道みたいにそれで反則にはならんが、会場が白けるじゃろーが!』
「あん?」
『そうだ、ダセェぞ‼』
『正々堂々と闘えー‼』
オトヒメからの注意に続いて、
クライムもだが、オルジフは空中格闘研究会と空中騎馬戦同好会の対立を解消する 〔計画〕 に基づいて闘っている。そのためには観戦している両会の会員たちを試合内容で感動させなければならない。
つまらない試合を見せて反感を買うわけにはいかない。
「チッ……しゃーねぇな‼」
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