第100話 名案
セイネの言葉で特に気になった点を、アキラは聞きかえした。
「
「ええ。このゲームのプレイヤーで 〔空中チャンバラ得意だぜ〕 って人、これから探してみるけど少ないでしょうね。最悪1人もいない線も濃厚だと思ってるわ」
「そんなこと、ありえる? 発売当日から廃人プレイを続けて、ボクたちより遥かにプレイ時間の長い人だって大勢いるのに」
「現時点で確かなのは、ドッペルゲンガー以外の
アキラは息を飲んだ。
自分とセイネがドッペルゲンガーに敗れたことから始まって、いつのまにか話が大きくなっている。
これまで知らなかった
セイネが続けた。
「で、ここからは推測なんだけど。プレイヤーのあいだで 〔空中チャンバラの腕を磨きたい〕 というニーズはあっても、そのための練習環境がこのゲーム全体で不足してるんじゃないかしら」
「チュートリアルだけじゃ足りないと」
「ええ。わたしは人型アバターでの自力飛行による空中戦のチュートリアルを受けた時、空中チャンバラも習ったけど。わたしが戦ったドッペルゲンガーはそこでは見なかったノウハウを使ってきたのよ」
「あっ、それはボクも」
アキラは母から飛行メカによる基本的な飛びかたと戦いかたを習ったあと、さらに始まりの町で基本操作を教えてくれる
その時、母からは習わなかった空中チャンバラについても習ったのだ。その内容を
それは、つまり──
「このゲームの運営団体は空中チャンバラのノウハウの一部しかプレイヤーに開示していない。
「うん」
「対してわたしたちプレイヤーの空中チャンバラ技術はチュートリアル卒業時点で頭打ち。そこからさらに上達して未知のノウハウも見つけていくための練習が、ほぼできないのよ」
「そんなにできないもん? 空飛んでるエネミーに空中チャンバラ挑んで、勝てなくてもいいから技術を盗んだり。
「プレイヤーが空中チャンバラを望んでもエネミーは最初からは応じてくれないわよ。射撃武器を持ってればまずは撃ちあいから始まるんだから。接近する前にそれで落とされても落としちゃってもチャンバラはできない。わたしたちがドッペルゲンガーと空中チャンバラになったのは偶然が重なった結果なのよ」
「あ~、そっか」
アキラの
セイネのシメオンが自らのコピーと空中チャンバラになったのも似たような理由なのだろう。
そうそう起こることではない。
「それと 〔負けてもいいから戦って技術を盗む〕 ってのも有効とは思うけど大変ね。メカに乗るのには課金以外では時間経過でしか回復しない
「あぁ……! そっかー」
「PC同士ならこれらの心配はないけど、下手っぴ同士で漫然とチャンバラしてても、なかなか強くはなれないと思うのよね。未知のノウハウの発見も運次第というか」
「上手い人の技術にふれたほうが上達は早いよね。このゲームの場合、その 〔上手い人〕 がエネミーだから戦うのに
「そんなこんなでプレイヤーの技術の内、空中チャンバラだけが全体的に低いままだから、ドッペルゲンガーに他の戦法では勝てても空中チャンバラでは勝てないって状況なんでしょう」
「ええと、つまり」
アキラはこれまでの話を整理した。
「ボクたちが同サイズの飛行メカを買って空の散歩をしようにも、どこのフィールドにもドッペルゲンガーが出てきてやられちゃう。なら演習場にでもこもって特訓するにしても、下手同士だとドッペルゲンガーに勝てるようになるまで、どれだけかかるか分からない……え、これどうしたらいいの?」
「ドッペルゲンガーを倒すだけなら空中チャンバラしなければいいのよ。地上戦か、空中射撃戦。
「それもやってみないと分からないけど、空中チャンバラよりハードルが低いのは確かだね……でも、なんかそれは、ヤだなぁ」
「そう言うと思った。わたしもよ」
「うん。逃げるみたいでシャクだし。一度でも倒しちゃったら二度と戦えなくなるんなら、他の方法で勝っちゃうとさっきの雪辱は永遠に果たせなくなるってことだよね。やっぱりドッペルゲンガーは空中チャンバラで倒したい、倒せるようになりたいかな」
「そうこなくっちゃ♪ じゃあ空中チャンバラの腕を磨く方針でいきましょう。それで上達したか確かめるための挑戦相手としてドッペルゲンガーは取っておくってことで」
「それはいいけど、どう磨くの? それができないって話を今してたんだよね? ──まぁ、なにか考えがあるんだろうけど」
「まぁね~? 今までは無理だった。このゲーム全体で。でも、わたしがこの問題に気づいたからには! 無理じゃあ、なくするわ、これから!」
セイネがグッと拳を握る。
変装用のフード付マントの格好で。
それだけの動作がいちいち怪しい。
アキラは周囲の視線を気にしながら聞いた。
「で、具体的には?」
「研究会を開くの! 〔空中チャンバラ練習したいけど環境なくて困ってる〕 ってプレイヤーを、掲示板で呼びかけたり
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