第26話 実力
ガサッ‼
「「え⁉」」
突然すぐ近く──道の脇の茂みから音がして、アキラは
前方で
大勢いる敵の奥のほうは手前側に隠れていたので、それが森に入った時も気づかなかった──アキラの脳は瞬時にそう理解はできても、体を動かす指令を出すことはできなかった。
『カカカカカッ!』
(くそ! 動け!)
龍牙兵が髑髏の歯を鳴らして襲ってくる!
その標的はレティだ、彼女を守らないと!
「ひっ──」
ガクッ!
龍牙兵の剣が頭上に迫ってレティが声を漏らした時、龍牙兵が転んで剣がそれた──龍牙兵の片脚を、
「オラァッ‼」
倒れた龍牙兵の頭部にオルが改めて斧が振るうと、龍牙兵はその髑髏を叩き割られ、動かなくなった。
龍牙兵は頭骨か背骨のどこかを破壊されると即座にHP──
身長90センチメートルと低身長なオルは相手が立っていると頭骨にも背骨にも攻撃が届きにくいので、まずは片脚を潰して転ばせてからトドメを刺したわけか。
「あ、ありがとう、オルさん!」
アキラは胸がチクッとした。レティの危機に不甲斐なくも動けなかった。それどころか他の人がレティを守り、彼女からお礼を言われたことに嫉妬した。心身ともに情けない。
「まだだ! 気ぃ抜くな‼」
「えっ──」
「ッ! うおおおおおッ‼」
アキラは飛びだした。レティからは死角になっている方角の茂みから新たに現れた、1体の龍牙兵へと。そいつもレティを狙っている、今度こそ自分が彼女を守る!
名誉挽回だ‼
走りながら抜いた剣を頭上ではなく脇に構える。チュートリアル道場で
ブンッ!
「なっ──」
叩きつけ、られなかった。
アキラの剣は空振りした。
龍牙兵が直前になって跳躍したからだ。そんなに高く跳んだわけではない、ただ身長170センチの龍牙兵にとって120センチのアキラの放った横薙ぎは簡単に跳びこえられる高さだったのだ。
「うわぁっ⁉」
ズシャッ‼
予想外に空振りしたため剣の勢いに振りまわされ、アキラは結局、初めのチュートリアルで
バキッ‼
──後ろから飛んできたオルの斧に頭を割られ、倒れた。そしてオルはすぐに落ちた斧を回収し、レティは倒れたままの自分を抱きおこしてくれた。
「アキラ、大丈夫⁉」
「うん……! オルさん、ありがとうございます」
「アルにも頼まれたしな。どういたしましてだぜ」
格好悪い。
なにが名誉挽回だ。
これでは恥の上塗りだ。
自分も龍牙兵を倒せると思ったのが根本的に間違っていた。
向こうで同じ龍牙兵の大群がアル1人に軽くあしらわれているのを見て龍牙兵に対して弱い印象を持ってしまったが、熟練者向けの戦闘プログラムを組まれた龍牙兵は普通に、今の自分よりも強かった。
単にアルが強すぎるだけだ。
そしてオルも、アルほど異常な強さには見えないが龍牙兵1体が相手なら楽勝な様子。これが熟練者の力、そして自分が初心者だということを改めて思い知った。
「アタシたち、やることないかも」
「そ、そうだね……」
レティが発した気弱な発言に、アキラも同意するしかなかった。アルとオルに任せておけば負けることはないし、自分たちは足手まといにならないよう逃げまわっていたほうが──
「いや、そうでもなさそうだぜ」
「「えっ?」」
「ぬおーッ⁉」
向こうから、無双していたはずのアルの余裕のなさそうな声。何事かと振りかえると──アルが戦っていた龍牙兵の集団がいなくなり、代わりに身長4メートルほどの龍牙兵が出現していた。
「「また⁉」」
アキラはレティと草原で、
合体龍牙兵を相手にさすがのアルも苦戦していた。相変わらず敵の攻撃は全てかわしているし、放った攻撃は当たっているのだが──
カキン!
「ぬぅっ!」
合体龍牙兵の下腿に当たったアルの
これはもう、無理なのでは。
「これ、やっぱりメカで倒すしか。誰か1人だけ召喚してアイツ倒して、ボスは残り3人のメカで戦うしかないでしょ」
レティがそう提案する。
それにオルが反論した。
「いや、手はある。さっき 〔そうでもない〕 っつったろ? 嬢ちゃんと坊主の持つ剣の付属スキル 〔
「「⁉ は、はい」」
「2人の剣はそれを使った時だけ 〔竜特効〕 の効果を帯びる。それがありゃ、あらゆる竜属性モンスターに防御力無視でダメージを与えられる。ドラゴンの牙から生まれた龍牙兵も竜属性だ」
「じゃあ今、生身であいつにダメージを与えられるのは、ボクとレティだけってことですか?」
「そういうこった」
「無理です!」
レティが叫んだ。
「確かに屠龍剣は生身でも
「いや、倒せるよ」
レティの言葉をさえぎり、アキラは断言した。
¶
「アル! そいつの注意を引け‼」
「承知した‼」
オルの声に振りかえらずに返事をし、アルは通じない攻撃の手をとめた。そして合体龍牙兵が攻撃しやすい位置に陣取り、いざ攻撃されたらその巨大な剣を軽々と回避していく。
アキラとレティはその横をそ~っと通りすぎ……合体龍牙兵の背後に回りこむ! そしてうなずきあって合図して──
「
アキラは叫び、その音声入力で青く輝きだした
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