第14話 反省
「マジカルキャスト‼」
円形に広がりながら落ちた網の、外周に並ぶ
「ドー・モセイ・ネデース!」
セイネが魔法陣に向かって伸ばした両手で印を組みながら呪文を唱えると、魔法陣がいっそう強く輝いて光の柱がそそりたつ。
「地より出でよ、
魔法陣の下の地面が隆起しだし、光の柱の中へと大量の土砂が吸いこまれていく。それらはやがて人の形にまとまっていき──石像の巨大人型ロボットとなった。
それは
その全高は40メートル。
その胸の中央にある青いガラス光沢の円盤から光が放たれ、それを浴びたセイネの体が浮きあがり、光の道を通って円盤へと吸いよせられ──
接触。
セイネは固体に見えるガラス板がまるで液体かのように、その中へと沈んだ。そして
「行くわよ‼」
魔神ドラグネットが走りだす。その姿は半裸に部分鎧をつけた古代ローマの
だがドラグネットは、その銛と網を投げすてた。
そして長い歩幅で一瞬にして距離を詰め、膝をついて地面に覆いかぶさり、
「おっまたせーっ♪」
バチーン!
ドカーン‼
『『……え?』』
合体して全高10メートルになった黒巾力士も、さらにその4倍ある相手の前では赤子も同然。あっけなく潰れて爆散した。
¶
「なーんか釈然としないわね」
戦闘後みんながメカから降りると、レティが憮然とした。助けてくれたセイネに、アキラと2人でちゃんと礼を言いはしたが。
アキラも分かる気がした。セイネは確かに初心者の自分たちのピンチを助けてくれたが、経験者として優れた腕前を披露してくれたわけではない。
体格差の暴力。
そもそも登場メカはだいたい4メートルのアタルと、40メートルのレアアースとでは戦いのスケールが違いすぎる。
アタル基準で 〔通常よりデカい敵〕 となった合体力士を、さらにデカい、それも別作品のメカでたやすく倒されたことには虚しさを覚える。
越境行為……そもそもクロスロード・メカヴァース自体がクロスオーバーものなのだから越境しているのは当然なのだが、その弊害を感じた。
「
「それが、そうでもないのよね」
レティの率直な物言いに、セイネが返す。
「デカい機体はそれだけ出撃コストも大きくなって扱いが大変なんだから。召喚して消費した膨大な
「あー、シビアなのね……ごめん、文句言って。雑魚相手に過剰なリソース消費させちゃったんだ」
「いーのよ♪」
MPは 〔
その消費量が 〔出撃コスト〕。
多様なロボット作品のメカが原作どおりのサイズで登場するこのゲームにおいて、サイズの異なるメカのあいだのパワーバランスはデリケートな問題だろう。
アキラのように好きな原作のメカが小型だったから小型メカを使用しているプレイヤーにとって、機体が大きいほど有利になるという法則は不公平に感じやすい。
だが大きさに見合った力がなければ大型メカの使い手が割を食う。そこを 〔大きくなるほど強くなるが出撃コストも増大する〕 とすることでバランスを取っているのだ。
そのことは納得したが。
別のことが気になった。
「ねぇ、セイネ。チュートリアル戦闘でも、さっきみたいにサイズ差で叩きつぶしたの? タロス先生のこと」
「へっ? ……あぁ、違う違う」
アキラの問いに、セイネはパタパタと手を振った。
「わたしが魔神でチュートリアル受けた時、タロスが全高5メートルだったと思ってるでしょ? あなたが
「え? うん……」
「わたしの時はタロスも魔神と同じ40メートルだったわよ」
「「えっ⁉」」
「あの指南役
「「そうだったんだ……!」」
それなら授業するのにサイズ差で不便しない。
「原典のギリシャ神話でタロスの大きさって言及されてないのよね。だから未知数。そのこととゲームの都合を上手く一致させたんだと思うわ」
「なるほど!」
「あ!」
突然レティが大声を上げた。
「タロスで思いだしたわ! アタシ、もっとあの人の授業を受けなきゃ。さっきの戦闘、ダメダメだった。初めは楽に倒せていい気になったけど、途中から勝たされてるって気づいたし」
「あ、ボクも! それ思った」
「
「うん、そうしよう」
そこでセイネも話に加わってくる。
「ただ、あそこで習える項目って多くて、全部こなすまで道場ごもりしてると飽きるから。1つ習って上達したらフィールドでそれを腕試しってサイクルにするといいわよ」
「「なるほど!」」
「それとね。わたし動画の撮影やら編集やらで忙しくて。そんなに頻繁には一緒に遊べないの。
「大丈夫。今日はありがとう、セイネ」
「アタシも。世話になったわ、ウサ耳」
「……変態でないだけマシか。それじゃ、今日はそろそろお開きにしましょうか。ログアウトの仕方は分かるかしら?」
「「OK」」
「では、お疲れさまでした!」
「「お疲れさまでしたッ‼」」
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