第12話 翡翠
VRMMO〔クロスロード・メカヴァース〕 の舞台において、地球の外側にあるのが
青空に太陽が輝いている。
巨大なプラネタリウム。
太陽も月も星も、映像。
ただし
その
東京湾に面した東京都 品川区で生まれ育ち水平線を見慣れたアキラには、その違いが分かった。仮想現実とはいえ 〔異世界にいる〕 ことを視覚的にも実感できることにワクワクする。
「凝った設定だよね、ここって」
「そうね、アタシもそう思うわ」
アキラの言葉に
その馬車の持ち主であり御者台で馬の手綱を引く、もう1名のパーティーメンバー、セイネが後ろにいる2人の話に加わる。
「プランナーがいいのよ」
「「プランナー……?」」
「ゲーム制作陣の、企画の担当者。その仕事は多岐に渡るけど、世界観の構築もその1つ。クロスロードのプランナーは、クロスソードの世界観も手がけてる。そりゃ優秀よ」
〔クロスソード・メタヴァース〕
〔クロスロード・メカヴァース〕
これら名前の酷似した2つは、どちらもグリッド・エピックス社の開発したウィズリム対応VRMMOであり、世界観こそ共有していないもののゲームシステムは全く同じな兄弟作。
兄に当たるクロスソードは世界中のVRユーザーの大半に遊ばれている超人気作。その世界観はありふれた中世ヨーロッパ風ファンタジーながら独自性も光り、そのことへの評価も高い。
一方クロスオーバー・ロボットものである弟のクロスロードは
それはともかく。
「「クロスソードの話はいい」」
「あらら。クロスソード嫌いは相変わらずね」
「「ロボットに乗らないファンタジーに用はない」」
「なんでそんな長い台詞をハモれるの? こわ……」
アキラも意外だった。
ロボ好きゆえのクロスソードへの反感を口にした時、全く同じ台詞が全く同じタイミングで、レティの口からも出たことが。
「「……ぷっ、あはははっ‼」」
レティのほうも驚いたようで、2人は顔を見合わせると、同時に吹きだし笑いあった。どうやらレティもこの件に関して自分と価値観を同じくしていたらしい。
ロボットアニメ 〔
「ねぇ、アキラ」
「なに?」
「アナタのそのアバターの髪と眼の色って、もしかして
「そう。アタルの、
「やっぱり♪」
レティは嬉しそうに手を叩いた。
そしてこちらに身を寄せてくる。
「でも、アタルは
「とーんでもない!」
レティの挑戦的な問いに、アキラは不敵に返す。
「そんな決まりないけど、仮にあっても問題ない。だってアタルはちゃんと 〔
「……お見事! それなら 〔
「今では青系は 〔
「今でも青信号が緑色なのはその名残ね」
「そう。だから
「こっちは簡単すぎたわね」
「全然ついてけないわ……」
前からセイネのげんなりした声がした。
「じゃあ今度はこっちから。レティ、君の 〔スカーレット〕 って名前、英語で 〔
「あら。フェイの髪の色を公式は 〔
「フェイの漢字、非常の
「そのとおり!」
「やっぱりだ!」
「赤いカワミは、冒頭でフェイが化けていた赤い小鳥そのものよね。その巨大化バージョンが
「そして 〔
「そしてそして 〔
「宝石のジェイドのこと」
「そう! そして、こっちの意味の
「フェイの持つ赤の秘石と、アタルの持つ青の秘石。2人と同じ服装をしてるボクたちの胸にもある、この
「そういうこと♪」
2人の話は放っておけばまだまだ尽きることがなかったが、外的要因によって中断させられた。前方から、セイネの鋭い声が飛んだ。
「2人とも、敵襲‼」
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