野球がほんとうは嫌いな君たちへ

荒川 麻衣

第1話 

 このことを話すのは、何度目になるだろう。

 繰り返し繰り返し、心の中で考えてはいるが、口に出した事はなかったと記憶している。


 Instagramには書いたし、届いていると思ったが、私より後から生まれて、私より後から芸能界に入ったのに、彼らは死にたがっているらしい。


 日本人が死にたがりである事は、私も記憶している。


 悲惨な体験は、異口同音に、違う言語で、違う顔で、違う性別で、違う年齢で聞いた。それを口にするには時間がかかるだろう。


 小夜子の碑はないとわたしは書いたが、銀河系の地球と言う地球と言う星、日本国、関東地方、茨城県、水戸市、水戸駅から徒歩10分ほどかかる。その場所にある高校には、飛田すいしゅう先生の碑がある。


 甲子園野球が好きな人間でも、飛田、水中先生の話は知らないだろう。そもそも、この高校が甲子園に立ったのは戦前である。つまり、中学校と呼称されていたころである。


 翻ってみれば、確かにプロ野球が好きだとか、甲子園野球が好きだと言う人で、沢村投手を好きだと言う人間を聞いたことがない。


 むしろ、アクターズリーグの野球関係者に期待したいのは、正確には希望であるが、本来であれば彼らは沢村投手の碑の前で写真を撮るべきではなかったのか。


 まぁ、沢村投手が死んだことに対して何とも思わない人間がいても仕方がない。彼が亡くなって、もう何十年も経つのだから。


 繰り返し繰り返し聞いた言葉はある。沢村は天才だった。戦争は沢村を奪った。沢村だけでなく名選手を奪った。

 

 確かに、戦争によって恩恵は得るが、戦争後の後処理が大変である。あの厳しい寒さと大変さをもう一度を経験する際ない。だからこそ、全力で戦争を回避する。なるべく武力衝突が起きないように気をつける。それこそがなくなった魂への償いであり、生き続けるギルト、贖罪、償いである。


 これをどれだけの人間が聞いたことであろうか。


 誰1人として、アクターズリーグの関係者が、沢村投手の前に、手を合わせたことか。


 誰一人として、戦争反対を望みながら、敬意を払わず素通りする姿が目に浮かぶ。


 誰も、あの石ができるまでにどれぐらいの犠牲を払ったか知らないのだろう。


 そんなものである。

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