第7話 衝撃、友助の真実!

持ちあがった衝撃の事実に、二人は動揺を禁じ得なかった。

「本郷ってお前、アルフレッド新潟のか?」

「そうですけど、昴さんってもしかして沼津バランサーズの室井さんですか?」

「そうだよ。まさか、そんなーー」

「僕も驚きましたよ。まさか『敵同士』だったなんて」


それから4人でテリフィックまで向かい、澄玲が現在16歳で、アルフレッド新潟にマネージャーとして所属していること、美奈を起こすのに約1時間かかったことなどを話していた。そんな話をしながら4人が練習場まで辿り着くと、両チームの選手たちは既に半分ほどが到着していた。


 アルフレッド新潟は青と黒の縦縞のユニフォームが豪傑なチームで、攻撃的なチーム構成でありながら、アラの二人とゴレイロでの連携に優れており、このトライアングルディフェンスは鉄壁である。また試合中はイケイケであるにも関わらず、試合の外では皆が草食系男子であるというユニークな面も併せ持っていた。

試合前、友助と昴は互いの意思を伝え合う。


「今日はせっかくの練習試合ですし、手加減なしで行きましょうね」

「ああ、望むところだ。真っ向勝負と行こうぜ!」

それから両チームアップを終え、一通りメニューを熟した後、アルフレッドボールで試合が開始された。友助のドリブルからのパスでスムーズにボールが渡ると、袴田は、その流れのまま一気に攻撃を仕掛けて来た。


マッチアップしていた蓮はかなり警戒して身構える。だが、蓮は全国的に見て実力があると言えるプレーヤーであったが、袴田の妙技の前に為す術もなく一瞬で抜き去られてしまった。


「はっ、速い!!」

 袴田のこの『ロナウドチョップ』はFIFA最優秀選手賞である『バロンドール』に何度も輝いているポルトガル代表のクリスティアーノ・ロナウドが使っている技であり、踵で蹴ったボールを逆側の足の後ろに通すことで相手を躱(かわ)す技である。

蓮を抜き去った袴田は少しの余裕を見せ、一瞬のうちにゴールを奪い去ってしまった。


 そして、すぐさま試合が再開されバランサーズボールでの再開となったが、油断した甘利が友助にボールを奪われてしまった。マッチアップに不安を覚えた蓮がフォローに向かったが、友助の見せた妙技の前にあっけなく抜き去られてしまった。


「うわっ、くっーー」

友助のこの『ルーレット』は、98年FIFAワールドカップを制したフランス代表ジネディーヌ・ジダンも使っていた技で、走りながらボールを操り横に一回転することで相手を躱す技である。


アルフレッドはこの袴田 英輔と本郷 友助の『栄友コンビ』の活躍によって、地域CLにおいてほぼ無敵の活躍を見せていた。友助は更にカバーに走った昴の奮闘虚しく、いとも簡単にゴールを決めてしまった。


“クソっ。おとなしいナリして、激しい技使ってやがんな”

流石の昴も、この二人が一気に攻め込んで来てはどうにも止めようがなかった。

それにピヴォの位置からではディフェンスに間に合わないこともあり、戦況はかなり不利であった。その後も試合が続けられたが、今のバランサーズのディフェンスでは、アルフレッドのオフェンスを止めることは不可能のように思えた。


「ディフェンス、カバーしっかり!!スライド飛ばして!!」

味蕾の声出しも虚しく、この日バランサーズは、あっさりと負けてしまった。挨拶を交わしダウンを済ませて帰ろうとしたところ、昴を見つけた友助が話しかけてくれた。


「昴さん、今日はありがとうございました」

「ああ、強かったよ。アルフレッド」

「ありがとうございます。けど、結局は袴田さんの力ですからね。俺、いつか袴田さんに勝つのが夢なんです。ずっと勝てなくてーー。昴さんは夢ってあるんですか?」


「夢か――。『あった』よ」

「あったって、諦めちゃったんですか?まだ20代なのに」

「そうだよ、だってもう俺28歳だぜ。おっさんだろ?」

「う~ん。そんなことはないと思いますけど――」

「いいんだよ、これで。俺の人生なんてこんなもんだ」


「もう叶わないんですか?その夢」

「ああ、俺には無理だった。到底叶わない、儚いものだったよ」

ここまで話した時、長話に業を煮やした澄玲が友助を呼びに来た。

「分かった、今行くよ!」友助は昴の方に向き直る。


「それじゃ、昴さん。今度気が向いたら聞かせて下さいよ、その話」

「語るほどのもんでもねえよ、こんな『下らない話』」

 強がらないとダメだった。大切だったと認めてしまうと、今の自分の人生を否定してしまうようで耐え難かった。


それからバランサーズの選手たちは、6月に向けて日々厳しい練習を重ねて行った。この年フットサルはその転換期を迎えており、静岡屋内サッカーリーグと呼ばれていたものが刷新され、静岡フットサルリーグとしてリニューアルされていた。


従ってこの年は記念すべき第一回大会となり、フットサルの歴史に新たな1ページが刻まれた年でもあった。期待と不安が入り混じる中、バランサーズの選手たちは、それぞれの思いを掲げてピッチを踏みしめようとしていた。

2002年6月2日。第一回静岡県内フットサルリーグ、いざ開幕!!


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ここまで読んで頂いてありがとうございます。


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