第4話 噂
試合は結果的に1軍が7対0で圧勝し、休憩を挟んでAチームBチームに分かれての紅白戦となった。だが開始早々、勢いよく飛び出した蓮が蹴ったボールがクロスバーに当たって跳ね返り、運悪くBチーム側の無人のゴールに吸い込まれてしまった。
「馬鹿野郎!オウンゴールになってんじゃねえか」
「あ!やっちゃった。すません」
いきなり昴に怒られながらも、その後の蓮は堅実に試合を熟して行った。結局試合は蓮のオウンゴールと別記の得点で、Aチームに2点が入ったものの、昴が2点、甘利、辛損、蓮が1点ずつで5点を獲得したBチームの勝利で幕を閉じた。
そこから砂浜に土俵を書いての相撲大会に発展し、負けた二人が整地することになった。特にルールなどなく、それぞれが目についた相手と対戦して、バトルロワイアルで勝ち抜けのような形を取っていたのだが、ここで瑞希が思いもよらぬ提案をした。
「私、蓮くんだったら勝てる気がする」
「えっ!?僕けっこう強いですよ。負けないですからね」
「おい、やめとけ。瑞希は――」
昴が言い終わるより前に二人は取り組みを始め、蓮はあっけなく投げ飛ばされてしまった。無残に海に沈む蓮を見て、すかさず保が小言を言う。
「あーあ。だからもっとメシ食っとけって言っただろ。体重軽いままじゃ、次の試合でもまた吹っ飛ばされるぞ」
陸に上がった蓮がバツが悪そうに頭を掻いているのを見て、昴も一言つけ加える。
「瑞希は親が合気道の道場やっててさ。ついでに柔道と剣道もやってっから、格闘技はだいたい黒帯級なんだよ」
「それを早く言ってくださいよ」
「お前らが勝手に始めるからだろ。あと、整地よろしくな」
結局もう一人は同じく体重が軽い味蕾が負ける形となり、二人して整地を行った。
そして、バランサーズの選手たちは、最終日のもう一つの楽しみであるBBQを行うことにした。帰りのバスは22時に手配していたため、まだ少し時間に余裕があって、ビーチの側にあるBBQ場で予め買ってあった肉や野菜、魚介類に舌鼓を打った。
「食べ始める前に皆に報告がある。来月の21日と25日に地域チャンピオンズリーグに出た2チームと練習試合が決まった。沼津に帰ってからも張り切って練習するぞ!」
「おお、いいじゃん保さん。流石に顔が広いね!」
昴がそう言うと、保は嬉しそうに声を弾ませた。
「だろ?名古屋アレンジャーズとアルフレッド新潟って言ってな。両方相当な強豪だ」
それから皆でテーブルを囲んで食事を楽しんでいた所、急に蓮が保に話し掛けた。
「今回の対戦相手って2チームとも相当強いんですよね。名古屋アレンジャーズとーーなんでしたっけ新潟のヤツ?」
「ああ、アルフレッドだろ。あのチームはやべえよ」
「やばいって、どうやばいんですか?」
「なんたって今回のチイチャンで2位になったらしい。強力な選手が二人居てな」
「へ~、どんな選手なんですか?」
「まずはキャプテンの袴(はかま)田(だ)だな。日本代表としてプレーしてる程の選手だ」
「ああ!聞いたことあります。なんだか凄い技を使うっていう人」
「そうそう。あとは、本郷(ほんごう)ってヤツが居て、ソイツがとんでもなく上手いらしいんだ。アーリークロスが抜群でよ。ウチには居ねえようなタイプだな」
「へえ、そんな凄いんですね」
「なんでも日本代表候補だそうだ。まあ奴には要注意だな」
保は妙に警戒しているようだ。そして、蓮は終始気になっていたことを聞いてみた。
「で、結局どこが優勝したんですか?」
「ああ、神戸ストイックスってとこだよ」
「へ~っ、神戸か~。今度、試合してみたいですね」
「やめとけ、あそこはマジで気性が荒いからな。ボコボコにされるぞ」
「保さん、そこのチームのこと知ってるんですか?」
肉と野菜を選手たちの取り皿にキレイに取り分けながら、莉子が聞く。
「ああ、昔まだみんなが入る前に試合したことがあってよ。散々だったよ。鳥居さん共々ズタボロにされて」
「そう言えば今回ニワトレやらなかったですね」
すると別記が、莉子に注がれたタレの量が多いことを気にしながらも、思い出したように言葉を発した。
「あ、そう言えばそうだな。なんか鳥居さんに悪い気がするし、みんなアップの時に
やったことにしといてくれよな」
「ラジャー!!」
ビールを5缶ほど空けて完全に酔っぱらった美奈は、ニワトレが何なのかも分からないまま敬礼のポーズを取っていた。
「もう、美奈ったらーー」
瑞希は、そんな美奈をさほど心配もせずにそう言った。
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