終章

【設定】香夜世レポート・上級編

~ 陰陽師・ぶね香夜世かやせによる報告書 ~



「ごきげんよう、けんさん。その後みおさんのお加減はいかがですか? ……それは何よりです。うる様と和尚にも伝えておきます。……瑠仁るじろう? あの男は放っておきましょう。そんなことより情報交換を始めますよ」



  *  *  *



◆新進気鋭の烈士チーム


 冥遍めいへんとの対決で我々と共闘した三つのチームについて、おさらいしておきましょう。今後も協力する機会があると思いますし。



六宝牌ろっぽうはい


 防衛戦に優れた六人組のチームです。リーダーは槍使いですが、大盾使いのサブリーダーが頼りにされているようです。西洋出身の鬼人で、あなた方の所のジャンルカさんともこんにしているとか。


 他にも薙刀なぎなた金砕棒かなさいぼう殻竿からざお(≒フレイル)など珍しい得物の使い手がいます。最年長は高度な法術を修めた狸人族イェイェノットの山伏です。



没汀ぼってい


 すい族のみ六人で構成された武闘集団です。全員がきょう流・ひょう流といった武術にひいでており、もちろん水辺での戦闘にも長けています。


 各自とも掌打や蹴り技、点穴などの得意分野があり、鉄爪や暗器使いまでいます。ちなみに、船上での戦いでおくれを取ったリーダーは、ラリッサさんに対抗意識を燃やして、ひそかに再修業中だそうですよ。



さいしゅう


 五人中三人が弓矢・いしゆみ・狙撃銃を扱う射撃の名手です。小太刀と小銃を両手に扱うリーダーは乱戦自慢で、彼が前線を撹乱かくらんする間に遠隔部隊で本丸を叩くのを定石としています。


 また、忘れてならないのが治癒術や防護術で仲間を支援する呪禁じゅごん師の存在です。彼女の獲得を境にチームの戦術は安定し、今日こんにちの躍進へとつながったのだといいます。




しょう


 霊脈の乱れは周囲の空間を歪ませ、瘴気を発生させます。その正体は、空間に生じた亀裂から漏れ出した、魔界の空気です。


 瘴気はほとんどの物体を透過しますが、魔物など一部の存在には吸収され、凶暴化をうながします。太古の人類にも熱病などの悪影響をもたらしましたが、現生人類は耐性を備えているので、人によって軽い違和感を覚える程度です。


 瘴気は魔界の「空気」とは言われていますが、その波及パターンから考えて、実質的には放射線や電磁波――トゥーラモンドにはない概念ですが――の方が近いのかもしれません。




◆悪魔の正体


 千五百年前の『十三年戦争トレットノリガ・クリゲット』は、悪魔たちの侵略戦争であるというのが、これまでの定説でした。しかし近年、各地のドヴェルグ遺跡の調査が進むにつれ、新しい仮説に注目が集まり始めています。


 すなわち、発端は侵略ではなく亡命――魔界の権力闘争に敗れた穏健派の悪魔たちが異世界への移住を計画、それを阻止しようとするトゥーラモンド住民の抗争だったのではないか――という見方です。


 戦後生き残った少数の悪魔は、ドヴェルグとの密約を交わします。錬金術の実験に協力する代わりに、魂だけを人造素体ホムンクルスへと憑依させ、完全なトゥーラモンド住民として生まれ変わったのです。


 もうおわかりでしょう。魔界での記憶を捨てた古の悪魔たちこそ、今日を生きる魔人族の祖先というわけなのです。



  *  *  *



「おや、意外と驚きませんね。……はい? 現地で実際見て来たですって!? ぐぬぬ……またもや新月組しんげつぐみに出し抜かれ……コホン。今後もわたしたちじゅうせいとはせったくしていこうではありませんか! いえ、別に怒ってなどいませんからね!」



香夜世かやせレポート――一旦おしまい)




  *  *  *




★香夜世 イメージ画像

https://kakuyomu.jp/users/mano_uwowo/news/16818093074677814443

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