【朗読あり】35歳の風俗嬢でも幸せになれますか?
武藤勇城
↓本編はこちらです↓
35歳の風俗嬢でも幸せになれますか?(前半)
自分で言うのもなんですが私は不幸な家庭に育ちました。だからでしょうか。人の温もりや愛に飢えていたと思います。
物心つくまでは幸せだったような気がします。幼い頃の記憶は曖昧なもの。公園で遊んだこと。近所の夏祭り。漠然とした「楽しかった」記憶はあります。父親がいたことも薄らと覚えています。でも本当にぼんやりした淡い記憶だけ。父親の顔も声も匂いも思い出せません。
7歳の時に両親が離婚。兄弟はいません。唯一の親戚は縁遠く。母親は深夜まで働いて。だから私は家で一人ぼっちでした。家事は私がやらねばならず友達と遊ぶ時間はありません。クラスの隅っこにいる眼鏡を掛けた暗い女の子など誰も気にしません。いいえ最初は声を掛けてくれた子もいました。でも遊びに行く時間も心の余裕もなくて。私から拒絶してしまったような気がします。
高校は伯父の支援で行かせて貰いました。でも大学へは進みませんでした。高校時代もバイトと家事と勉強だけ。友達と呼べるような人はあまり思い付きません。唯一と言って良いでしょう。家が近いという理由だけで登下校の間一緒だったワタル君とはよく話をしました。私の家庭の事情を知る唯一人の他人。いつも気に掛けてくれて。いつしか手を繋いで歩くようになって。バイト先も一緒。口下手な私をフォローしてくれて。お礼に得意の
こう見えて私スタイルには自信があります。子供の頃から胸ばかり成長して。多分クラスの誰よりも大きかったと思います。クラスの男子に悪戯されたり校舎裏で裸の写真を撮られそうになったこともあります。何も言えない私。エスカレートしそうなところを担任の先生に助けられました。そうでなければ私の初体験は悲惨なものだったでしょう。
高卒で伯父の仕事を手伝うようになりました。従業員は
それから水商売に手を染めました。性風俗店を転々と。最初はソフトなお店から。やがて本番ありのお店へ。沢山のお金を手にする一方で私はどんどん汚れていきました。20歳から始めて25歳でトップの座に着きました。口下手な私はすっかり影を潜めハイテンションでお喋り。水のようにお酒を呷っては意識を失い見知らぬ男の隣で目覚めました。後悔はありません。もうどうなってもいいって思いました。
矛盾するようですが私は綺麗になる努力を欠かしませんでした。トップに立てたのは努力の賜物だと思います。瞳は大きく二重に。鼻梁は細く高く。下唇は厚く大きく。顎の骨は細く削り。全身永久脱毛。ホクロ除去ではワタル君に褒められた胸の中央のものだけ残しました。元々大きかった胸は形を整え先端の色は綺麗なピンクに。骨延長で足を5センチ長く。毎週のエステ通いで肌は綺麗に。髪は漆黒のままツヤ出し。ジムとプールに通って体も鍛えました。外見を整えたことで自信が付き暗かった私は消え去ったのです。トークで。ベッドで。手練手管を駆使して
使い切れないほどの大金を手にした私。ホスト遊びに嵌りました。信じられないようなイケメンが幾人も私一人を囲んで盛り上げてくれます。王女様気分です。近場のホストクラブは全て通い。キャスト全員顔見知り。新人が入れば迷わず指名。気に入れば即座にお持ち帰り。というか全員一度は相手をしたと思います。中でもお気に入りはタケ君。入店初日の出会い。安っぽい鼻をつく香水の匂い。その場で筆下ろし。その後もタケ君と何度も肌を重ね。風俗店のイロハを教え込むと。やがて私の好きなアルマーニの爽やかな匂いに染まりました。
あの子はどんな声で囁くのだろう。どんなテクニックで喜ばせてくれるだろう。顔や声だけではなく体も匂いも味も全部知りたくて。稼いだお金は全部ホスト遊びに注ぎました。20代半ばから後半の私は幸せの絶頂。人の温もりをこんなに求めた時期はありません。
ちょうどこの頃。新しい常連が出来ました。1万円のワインと数千円のスナック。それと
三十路が近付き体に異変が…肌のツヤが悪い。朝起きられない。メイクが乗らない。それは30歳を過ぎると明らかな数字として顕在化しました。ハタチの新入りにトップの座を追われ。それまで私に大金を投じてくれた太客を何人も奪われ。プライドを捨て私の方から夜のお誘いをしても戻って来ず。凋落はあっという間でした。居場所がなくなり移籍を決意。手練手管を駆使し数多の男を泥沼に引き込もうと試みます。でも罠にかかる男はいなくなりました。僅かに私が移籍した後も通ってくれた太客が数人います。でもどこに行ってもトップを奪えず。私の唯一の救いの場。ホスト通いも減らさざるを得ませんでした。
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