第26話 フェニックス

 リークとシェイザーは色々な事を語り合った。

 リークの情報は人間側の情報、シェイザーの情報は魔族側の情報。

 2つの情報は上手く絡み合う事が出来た。


「それで、兄貴はいつも俺様よりはるかに上を行くんだ。いつもいつもだ」


「そうか、僕には兄弟がいないからなー」


「それはとてつもなく幸せな事だぜ? 親の愛情を1人締め出来るからな」


「そうとも限らないんだよ、両親は冒険者で、どこか遠くで働いてるからね、小さい頃の記憶しかないからな」


「そうか一人っ子も大変なんだな」


「まぁ、シェイザーも大変そうだけどな」


 2人して同時に笑い転げる。

 そんな光景をカナシーとカエデちゃんは見ていて微笑ましい笑顔を浮かべていた。


「それにしてもモンスターがいねーな、恐らく兄貴の殺気で逃げたな」


「そうかーそれは残念だな」


 だが不意に空からもの凄い熱気を感じる。 

 リークとシェイザーは同時に空を見上げた。

 そこには炎の羽で体を纏った炎の鳥がいた。


「あれは、あれは!、あれはあああああ」


 カナシーが絶叫の声を上げる。


「しかも、しかも!、しかもおおおお、1体だけじゃないぞおおおお、10体もいる!」


「カナシーどうしたんだよ」


「お前バカか、あれは伝説級のモンスターフェニックスだぞ、その羽1枚で国を動かすくらいの値段がつくし、製作次第では死後まもなければ蘇る蘇りポーションを造れるぞ」


「す、凄い」


「へ、へぇ、そんなもんが作れんのか」


「捕まえろおおおおおお」


 カナシーは密猟化のリーダーモードにチェンジすると、空高く指さした。


「「いや、無理だろ」」


 リークとシェイザーが同時に答えると。


「お前はアホなのか馬鹿なのか、どっちかにせよおおお、お前にはドラゴン化というスキルがあるではないかああああ」


「いやーあれ使った事ないし」


「今使え阿保おおおお」


 カナシーさんがとてつもなく興奮しているが、まぁ仕方がないとして。


 リークはスキルのドラゴン化を発動させていた。

 体の皮膚の1つ1つの何かが壊れていき、次に結合していく感覚がする。

 一瞬の光に包まれて、そこに現れたのは、1体の巨大ドラゴンであった。

 白い鱗をしており、自分自身がドラゴンになった事など信じられなかった。


 どうやって空を飛翔するか、まるで生まれながらにドラゴンだと思える程理解していた。


「シェイザー、カエデちゃん乗ってくれ」


「おう、ドラゴンライダーになった気分だぜ」


「す、凄いです。リークさんの背中ですね」


「滑稽な姿じゃ」


 カナシーはリークドラゴンの背中にふわふわと乗った。


 白い翼を羽ばたかせて、地面を走り出す。 

 思いっきりジャンプすると空を飛翔する。

 ふわふわと昇っていき。遥かな空へと飛んで行く。

 まだまだコントロールが下手で、雲に突っ込んだりしていると、先程見つけたフェニックスを発見する。


 10体のフェニックスはこちらに気付いて攻撃モードに変更した模様。

 リークは鑑定スキルを発動させると。


【フェニックス:レベル3500:《飛翔》《羽ばたき》《炎のオーラ》】


 デバフを一応発動させても。


【デバフ魔法のレベルが足りません】


 と頭の中で鳴り響き。


「まぁ、予測済みだけどな、原理としてはいつも通りぶっ倒して、スキル盗んで、転送という感じで行こうと思う、カエデちゃんよろしく、シェイザーは周りを状況判断で頼む」


「はい」

「おう」


 後、スプリガンから盗んだスキルがある。スプリガンパニックで忘れていたが【巨大化】と【小人化】と【ビーム】だった。

 

 フェニックスが2体こちらに飛翔してくる。前方の二方向から羽ばたきをしてきた。

 突風のような風がリークドラゴンにぶち当たり、翼がひしゃげそうになった。


 空中で飛行しながらバランスを整える。


 次に右方向と左方向から2体ずつ、計4体から羽ばたきされる。

 また翼がひしゃげそうになるも、なんとかこらえる。

 何と次は後ろから4体のフェニックスの羽ばたきを食らって、翼がぼきっと折れた音が聞こえた。

 

 うまくコントロールが出来ず、空から落下するかに思われたが、ドラゴンの翼は非常に硬く、そう簡単には落下しなかった。


 フェニックスの合計10体のコンビネーションの羽ばたき。

 だがそれはホンの序章にしかすぎず、周りから全体同時に炎のオーラを発動させてきた。


 フェニックスの体から熱風のようなオーラが襲い掛かってくる。

 四方からのオーラでリークドラゴンとカエデちゃんとシェイザーに襲い来る。


「自分はガード出来るけど、カエデちゃんとシェイザーは!」


「大丈夫だ。シールドソードの魔剣を使う」


 シェイザーは包帯でぐるぐる巻きにされた魔剣を鞘から引き抜く、青いオーラに包まれており、シェイザーの祖父が命を犠牲にして造った4本のうちの1本なのだろう。


 青いオーラが四角くリークドラゴンの体を取り囲む。

 

「このシールドは物理には効果が無い、それはフェニックスも理解しているはずだああ」


 シェイザーが叫ぶ。

 その通りで5体同時にこちらに突っ込んでくる。


「カエデちゃんとシェイザーで倒して弱らせてくれ、僕がドラゴンパンチを食らわせて転送させるから」


「まかして」


「まかせろ」


 リークドラゴンはただ空を飛翔する事しかできない。

 色々なスキルを発動しても良いがどのような反作用があるか分からない。

 なぜなら体の仕組みが人間とは違うという事もあるからが1つだ。


 なのでカエデちゃんとシェイザーに任せるしかなかった。

 カエデちゃんはリークドラゴンの背中を蹴り上げると、空高く跳躍して見せた。

 フェニックスの顔面を蹴り上げて、怯ませるが、レベル3500な為結構な耐久力がある。


 カエデちゃんは空中で静止しながら、両方の拳を構えると、みるみるうちに狼人間に変身していく。

 

 それも自我を保ったままの発動で。

 その時のカエデちゃんのレベルを見る為鑑定してしまった【山倉楓:レベル2300】となっていた。


 カエデちゃんもやばい級になったよなーとほのぼのと思う暇もなく、高速連打パンチによりフェニックスの顔面はぼこぼこに殴られる事になる。

 風圧に巻き込まれ、カエデちゃんが空に吹き飛ばされるが、まるで風を操作しているかのように、上手く流れにそって次のフェニックスの顔面を高速連打パンチでまた撃沈させる。


 別の咆哮の空ではシェイザーがシールドソードに乗って飛翔している。


「こういう使い方もあんのよねー」


 シールドソードのオーラを下方に向ける事で、空を飛ぶ事が出来る。


「さてアタッカーソードの出番だぜ」


 真っ赤なソードこと剣。

 シェイザーは一振りしただけで、雲をも両断し、そのまま宇宙に斬撃が飛び、星々が爆発する光景を見せくれた。


「ならぬならぬぞシェイザー、それをやるとフェニックスが死んでしまうぞ」


「分かってるって幽霊さんよ、これでもレベル4000なもんでねぇ」


 シェイザーが笑い。


「こういうのは試し切りでビビらせておきゃーいいんだよ」


 そう言いながら、アタッカーソードを鞘にしまうと、そのまま高速でシールドソードを飛翔させてフェニックス1体の顔面を殴る。

 相当な衝撃でがくんとフェニックスが落下しそうになるも、その時には既に隣のフェニックスを殴り、また隣のフェニックスを殴る。


 シェイザーの身動きは素晴らしく、無駄一つなかった。

 高速すぎてリークドラゴンの瞳では追いかける事が難しかったのだ。


 リークドラゴンは待ってましたとばかり、5体のフェニックスが落下しないうちに、ドラゴンパンチを浴びせる事に成功する。


 次の瞬間、渦に巻き込まれてフェニックス5体が吸い込まれていく。

 捕縛の腕輪が発動した証拠だ。


「さてと、そろそろ、スキルも習得した事だし」


 ちゃんとデバフ魔法でフェニックスのスキル5体分を習得していた。


【飛翔】×5 【羽ばたき】×5 【炎のオーラ】×5


 リークドラゴンの背中にはカエデちゃんとシェイザーが戻ってきている。

 にんまりと笑うリークドラゴンは、もう出し惜しみをしている暇はないとばかりに、スプリガンが持っていたスキル【巨大化】を発動。


 スプリガン程巨大化出来ないのは恐らくイメージ力が足りないから。

 体はテルハレム王国の4倍くらいで。

 空を覆うドラゴンと言う感じで。


 それだけで地上にいる冒険者達は大パニックになっただろうけど。


 フェニックスの残りの5体も大パニックになっている。


【羽ばたき】×5のスキルを発動させる。

 

 フェニックスが使用した羽ばたきの5倍はあるので、もはや台風を超えた災害の突風となる。


 フェニックス達は訳も分からず後ろに吹き飛ばされて、地上に落下していった。

 リークドラゴン達はそちらに向かう。

 もちろん巨大化スキルを解除してからだった。


 地面に降り立つと、5体のフェニックスが頭をくるくるとさせていた。


 リークは手加減パンチと手加減キックでフェニックスをぼこると、捕縛腕輪が発動した。


【飛翔】×10 【羽ばたき】×10 【炎のオーラ】×10となり。


 リークはドラゴン化を解除させた。

 カナシーはふわふわと降りてきてにこやかだったが。

 リークは空を飛びすぎて気持ち悪かった。


「はぁ、疲れたぜ、まさか空で戦うとは思っていなかったよ」


 シェイザーがそれとなく呟くと。


「シェイザーさんは凄いです。リークさんも、うちはまだまだですよ」


「そんな事はないよ、狼人化してもコントロール出来るのは凄い事だよ」


「えへへ」


「カエデとやらおめーはすげーぞ、狼人化は上手くコントロール出来るもんじゃねー」


「ありがとうシェイザー」


「ま、いいってこった。問題はあっちだ」


「何か来るな」


 リーク達が着陸したポイントは巨大な湖と林が重なった場所。

 細い道があちこちに広がり、林が道の先を隠している。

 林の向こうから大勢の冒険者の悲鳴が上がる。

 どうやら何かに食われている音だ。

 咀嚼音が響き、しばらくすると無音になる。

 だが冒険者は必至でこちらに逃げてきて。

 大勢の冒険者がこちらにやってきて。


【た、たすけてくれええええ】


 それを追いかける1体のモンスター、それは角の生えた馬ユニコーンだったのだ。

 そのユニコーンの口には草食獣の馬とは思えない鋭い牙がずらりと並んでいて、血で真っ赤に染まっていた。


 鑑定した結果【深紅のユニコーン:レベル5000】そいつはシェイザーよりも強かったのだ。

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