第378話 極秘
朝食までの時刻を確認したアメジストは瞬時に考える。話が出来る時間を頭で計算し再度、ラルミと目を合わせ声をかける。
「改めて、ラミ。無理なくお話できる範囲で……朝食までの間、ベリルお母様のお力に関する事を、教えてほしいのです」
懸命に現実と自身の魔力に向き合おうとする、アメジスト。その思いにラルミも応える。
「承知しました。仰ると通り、今すべてをお話するのは難しい。ですので、私の判断で恐縮ですが――」
扉前で話す二人の足元にいたクォーツは真剣な話だと察したのか、すすすーと奥の部屋へと消えていく。
「ぁ……」
(あの子は、大事な話をしていると解っているんだわ)
「クォーツお嬢様は、本当に賢い」
一瞬、声を止めたラルミであったがそう呟きすぐに表情を戻す。
「端的に申します。ベリル様の……といいますよりも、長年護られ引き継がれてきた『ベルメルシア家血族が持つお力』についてお伝えいたします」
「お願いいたします」
緊張を隠せないアメジストは自身の中でドクドクと流れ巡り続けてゆくその血液に生きる証を、感じる。その奥で鳴る心臓音は体中に響き渡るようであった。そして彼女の発する言葉は無意識に、敬語口調になっていた。
「ご存知の通り、ベリル様は『治癒回復』を完璧にこなす魔法の使い手でございました。そしてこの能力は、ベルメルシア家の血族が生まれながらに必ず持つと言われる力」
「はい、存じています」
瞬き一つするにも力が入る程に真剣な眼差しで見つめ、答える。
「そう、そしてお嬢様の手にも輝く丸い光。それは確かに癒しの力であり、その証拠に貴女様はこの身に安寧を与えてくださいました」
ラルミは目を閉じ胸に手を当てアメジストがその“力”に目覚めた瞬間をふと思い出す。幸せそうに笑むとまたすぐに表情を戻し、話を続けた。
「しかしその『治癒回復魔法』には、まだ先があるのです」
「魔法の、先?」
ゆっくりと頷くラルミは真っ直ぐにアメジストの瞳を見つめ、離さない。それは柔らかく優しい視線、それでいてより一層の緊張感が彼女の背中を走る。
「ベルメルシアの血に眠る隠された力――それは『蘇生魔法』にございます」
「――っ!?」
「これは恐らく現当主オニキス様もご存じでない“極秘事項”でございます。アメジスト様、くれぐれも口外なさらぬようご留意くださいませ」
(お父様が、知らない力の……)
「……解りました」
アメジストはこの時とても複雑な心境に、陥っていた。
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