第319話 籠絡
長きに渡り平和な場所だと言われてきたこの街は主に、ベルメルシア家が統括している。その数百年の間には当然、様々な問題が起こってきたがその都度解決へと導き収めてきた。
が、しかし。
今回現れたカオメド=オグディアという隣街から来た若き青年は初見の印象は何の問題もない、とても良く皆に慕われそうな雰囲気だ。それに騙され気を許せば最後……蓋を開けてみれば驚くような無礼を
そんな男が新規開拓との名目で平和なこの街へと入り込んできたのだ。
これまでカオメドが成功してきた事業方法は恐らく魔法によるものだと、推測される。現に言葉巧みな彼の言動はこの街で暮らす者たちの(祭典の準備中含め)警戒心をいつの間にか解き、
隣町以外でも名を知らぬ者はいない有能な腕利きと言われている、若き“
しかしそう簡単にはいかない新規開拓契約――その後の交渉決裂。
その結果にプライドの塊が原動力だというような彼の怒りの表情と発言は今後一体どのような矢を、向けてくるのか?
これからオニキスとエデ、そしてジャニスティが話す内容にはその件も含まれる。スピナの茶会に対する打ち合わせはもちろん、今後時代の移り変わりにどう対応してゆくのか。これから先のベルメルシア家がどのように変化し動いてゆくべきなのか?
強大な力を持つとされるサンヴァル種族エデですら「長い人生の中でも一番危険な人物」と感じた程の異様な気配を持つカオメドが次に何を仕掛けてくるか。
懸念とされる事項は、多い。
◇
「カオメド氏とは初見だったが……すでに要注意人物には違いない」
「えぇ、仰る通りですな」
夜ということもあり道中は沈黙での馬車移動だった、三人。その後、エデが店主を務める酒場に到着しいつもの席――奥へと向かう。
「今夜中に何か起こすとは考えられませんか?」
神妙な面持ちで話すジャニスティへエデは、答える。
「恐らくそれは無いと思うがね。一見、感情に任せて動いているように見えるが、カオメド氏は打算的でとても賢い」
結論は急がず、しかし対策は必須だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます