第3.5話 幼馴染みが居ぬ間に


「……ふぅ、何とか早めに終わった」


 昼休み、生徒会の用事を済ませた私は早足で教室へと戻っていた。

 

 どうして急いでいるのか?


 それは幼馴染みである佐藤一樹にあるお願いをしようとした瞬間に呼び出されてしまったからだ。

 それにあいつには一緒にお昼を食べる友達なんていないからきっと今頃一人で寂しくしているに違いないわ!!


 もしかしたら「あかねー」って言いながら泣いてるかも!



「ごめん。お待たせ……」


「へー! さっとっちってそんな資格持ってるの〜?」


「ああ、ひよこ鑑定士の他にはねこ検定(上級)、けん玉検定、似顔絵検定、チョコレート検定(上級)とかあるぞ。これ証明書」


「ま、まじだ……すげぇ」


「佐藤、ちなみにひよこの鑑定ってどういう風にするんだ?」


「うーんこれはひよこ!」


「いや適当かよ!?」


「あははーさとっちって面白いねー」



 教室に戻った私が目にしたのはみんなに囲まれて楽しそうに談笑しているいつきの姿だった。


 え? 待って。何? これ? 何でこんなうちとけてんの? 


「あ、あかねおかえり!」


 友達の華ちゃんがこちらに気づき、声をかけてくれたおかげでクラスのみんなが私が戻ってきたことに気が付いた。



「た、ただいま……えっとーみんなでな、なにしてるの?」


「え? 茜ちゃんがどっか行っちゃったから代わりにさとっちとよろしくやってるだけだよ?」


 さとっちってなに!? 


「えっと、ひなちゃん? なんかいつきと距離近くない?」


「ヘー? そうかなー?」



 いや、近いわよ。ちょっと、あんた達のパーソナルスペースはどうなってんの?

 おかしい、ひなちゃんは元々距離感が近い子じゃないはず……



「それじゃーあかねが帰ってきたことだし、解散しようか」


「えーひなはもうもう少しさとっちと話したーい」


「ほらほらいくよ」


 私に気を遣ってかみんな解散していく。



「……ちょっと、あんためちゃくちゃ人気じゃない!」


「多分、俺はお前の幼馴染みだからみんな声をかけて来たんだろう」


 そう言いながら栄養食を食べるいつき。

 

 まぁ、確かにそうかもしれないわね。


 ……うん。きっとそうよ!! そうに違いないわ!!


 ………………多分。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る