Re:ターゲットから始める英語勉強生活(高2)


 僕の高校1年生としての一年が終わり、高2となった2021年の4月。

 学年が上がると共に、みすず学苑での英語のクラスも進級した。新クラスは〈合格!やったるぞクラス〉。小規模予備校のみすずのシステムでは、一応最上位のクラスだ。4月時点では僕含めて高2生4人しか在籍していなかった。そしてクラスが上がると担任の講師が変わり、今までは40代くらいの関西弁先生だったのが60代くらいのイケオジの先生に教わることとなった。普通は授業後に生徒が一人ひとり並んで課題チェックをしてもらうのだが、その先生は生徒の待ち時間を無くす為に授業前に教室にやって来て課題チェックをしてくれた。ベテランの先生で、比べるわけではないが関西弁先生よりも課題チェックなど総合的に指導は丁寧だった。高2の前期はかなり勉強に身が入っていた時期だったので、僕は毎週先生が『ここからここまでやってきて』と言う課題問題集のページ数の1.5〜2倍くらいをこなして課題チェックをしてもらっていた。その為、途中からはページ数指定が無くなった。また、よく課題についての相談や授業の質問に行っていたので、自分にとっては一番思い出深い恩師とも呼ぶべき人になった。先生との関係について述べるとそんな感じなのだが、2年生前期の間は新クラスで取り扱う問題の難易度に苦戦することが多かった。僕以外の3人は自分よりできるという劣等感と共に、追い付こうという競争意識も芽生えた。

 新クラスでは、僕含めて男子2人・女子2人。もう片方の男子は海城かいじょう高校(私立男子校・東京・中学偏差値73〜75)に大網白里から通っているという子で、授業を切る(授業に来ないこと)ことが多かった。何故中学偏差値で説明しているかというと、高校からは海城に入学することはできない、いわば完全中高一貫校だからだ。因みに、僕が色々彼について知っているのはみすずの冬期合宿でちょっと話したからというのがある。あと彼は東大文科二類志望だ。女子の方はよく知らないが、片方は千葉大医学部志望だったと思う。もう片方は全く知らない。彼らとどれだけ実力差があるかは高2の時点ではよく推し量れていなかったと思うが、ともかく僕は英語を最優先とし、次に数学、世界史、国語という感じで新学年になっても受験勉強をバリバリ継続した。だが、勉強量に対して模試での成績の伸びは必ずしも良いわけでは無かった。6・7月に受けた駿台・進研模試の結果を上げる。


 第1回高2駿台全国模試(記述・ハイレベル) 2年生6月

     点数  全国偏差値 

 英語 62/200   50.1   

 数学 94/200   56.2

 国語 52/200   40.0

 総合 208/600   49.5

 判定(A=合格可能性80%以上 B=60%以上 Ⅽ=40%以上 Ⅾ=40%未満)

 一橋大法学部Ⅾ 一橋経済Ⅾ 千葉法政経Ⅽ 早稲田政治経済Ⅾ 早稲田法Ⅾ


  ベネッセ総合学力テスト 2年生7月記述

     点数  全国偏差値 校内順位

 国語 55/100   63.2    41位

 数学 54/100   61.5    34位

 英語 60/100   65.1    79位

 総合 169/300   64.9    28位

 判定(A=80%以上 B=60%以上 C=40%以上 D=20%以上 E=20%未満)

 東大文科一類E 一橋法E 早稲田政治経済E 千葉法政経Ⅽ


 進研模試での英語が、全国偏差値において一番成績が良くなったことは成長だと思う。それでも、数学と国語がその分下がっているようにも思えたことも事実だ。また駿台模試の偏差値がいまいち上がっていないのは、進研模試で中心的に出題される数英の基礎問題は解けても、駿台模試の標準〜難問にはまだまだ太刀打ちできていないこと、国語の出来が不安定だということの二点が挙げられる。ただ、基礎重視の進研模試で3教科偏差値が低くもなく高くもなく安定しているということは、ある程度の基礎力が保障されていると捉えることもでき、大きくは落胆しなかった。

 余談だが、6月頃になると執筆スケジュールと勉強との折り合いが悪くなり、高2の間は続けようと思っていたカクヨムでの執筆活動を中断することになった。それに付随して、作品の宣伝用だったTwitterからも撤退した。また夏休み中にファンタジア大賞という公募に一作出そうと考えていたのだが、それも断念した。大きくは落胆しなかったとはいえ、模試の結果に対してはやはり焦りを覚えていたのだと思う。その焦りに比例するように7〜8月にかけて僕の努力は加速した。

 夏休み中や9・10月は模試が無かったが、英語の実力が伸びていたことは英検の結果によって証明された。実は高1の1月に英検2級(2回目)を受験したが、その時もリスニングが足を引っ張って落ちていた。それからリスニング課題に取り組み、高2の6月に受けた3回目の受験でようやく英検2級を取得できた。その後、高2の9月に英検準1級を受験したのだが……。なんと、これは一発合格だった! 理由は明白だ。

 まず2級取得後に、すぐ準1級のリスニング対策を始めた。かなりスピードが速くて内容も難しかったが、夏休みを利用してほぼ毎日聴くことで慣れた。また、英検準1級のリーディングにおける語彙レベルが年々下がっていたことが僕に優位に働いた。数年前まで、英検準1級用のパス単と呼ばれる単語帳は早慶上位レベルといわれ、早慶受験生にも愛用されていた。しかし近年の速読・四技能重視の影響かリスニングの方が重視され、語彙レベルは大学受験標準〜難関レベルに下がった。そして、このレベルを一番良く網羅しているのはターゲット1900やシステム英単語といった大学受験では定番の単語帳だ。

 僕は高1の12月の終わりくらいから、自主的にターゲット1900と英熟語ターゲット1000を購入し、50個くらいずつ進めてはみすずの100段階マスターテストに挑戦。これはみすずのコマンドテストやリビューテストのように、授業に来たら強制的に受けるものではなく各自が自主的に挑戦するもので、高1の時点では僕ぐらいしかやっている人はいなかった。まず範囲が指定されている筆記テストを解いて自己採点。それが80点以上だったら、みすずの合格アシスタント(他予備校で言うところのチューター)の所に行って、口頭テストをやってもらう。相手にターゲットなど暗記の教材を渡し、相手が『それじゃ……betrayの意味は?』等という風に問うと、僕は『えっと……〈うっかり表す〉』等のように答える。これを20問ほど出してもらって、これも8割くらい正解だったら合格になる。筆記テストだけでなく口頭テストによる二重チェックによって、より脳に定着するというわけだ。とはいえ単語帳の一対一対応の語訳は違和感があるものも中にはある。さっきのbetrayもそうだ。〈うっかり表す〉って何だ? しかも実際に入試問題で出会うことが多いのは、赤字の〈うっかり表す〉ではなく黒字の〈裏切る〉だったりする。ただ、まずはターゲット等の単語帳で『こういうレベルの単語が入試では出題されてるんだ』ということを知って赤字の意味を覚えた上で、入試問題を解く中で『この単語は実際こういう意味で出題されることが多いんだ』と気付いて覚え直すというのが、何だかんだ一番効率が良いように思う。僕は夏休みまでには100段階マスターテストを英単語と熟語のそれぞれ40段階ぐらいまで終わらせ、何度も反復しながら覚え直し、高2の12月あたりで100段階を終わらせた。夏休み中は山川の世界史一問一答でも100段階に挑戦していた。

 そんなわけで英単語・熟語の暗記も十分にできていたので、英検準1級リーディングを解く上での知識は最低限備えていた。更に試験本番では、アンコール=ワットを建設したスールヤヴァルマン2世についての文章やウィスキーとスコットランド王家の関係についての文章が出された為、背景知識などを脳内で引っ張り出しながらスイスイと解くことができた。これらが英検準1級一発合格の所以である。

 夏休み中の英語の勉強は英検対策に限らなかった。Vintageという厚めの英語問題集があるのだが、僕は夏休み中にVintageの文法・語法の部分を7〜8周した。一周847題だが毎回全部解いていたわけではなく、間違えた問題のみ厳選して何回も繰り返していた。それにしても8周はやり過ぎだったと自省している。3〜4周ぐらいなら効果が見込めるが、それ以上は問題と答えを覚えてしまって非効率的になる。5〜8周目をやる時間を数学に回せていれば……という後悔。

 また、夏休みにはみすずの夏季合宿に参加した。この合宿はみすずの高3・浪人生がほぼ全員が参加するもので、福島のホテルで4泊5日缶詰めで一日11時間くらい一教科の入試問題100題以上を制限時間付きで解きまくるというものだ。僕はMARCH英語の講座を取った。講師は高1の時に教わっていた関西弁先生だ。恐らくその講座に参加していた高2生は僕だけだったと思う。これは見下しているというわけではないが、MARCHを第一志望とする受験生であまり真面目な人はいないので、休憩時間になると友達同士でおしゃべりしている人が大半だった。僕は夏季合宿中にスマホを触るのはやめようと決めていたし、同学年の人も周りにいなかったので、休憩時間中も数学の青チャート等を解き進めていた。正直周りからは引かれていたと思う。まあ普段の学校生活でも、授業中は内職(授業の教科とは関係ない勉強をコソコソやること)ばかり、休憩時間も受験勉強、昼休みは10分くらいでおにぎりだけ食べた後は図書室に籠って勉強、放課後は速攻みすずに行って自習……という日々を送っていた為、『周りはやっていないのに、自分だけ勉強している』状態には慣れていた。むしろそうでなくてはならなかった。周りが『まだ良いよね』と妥協する中で、自分だけが努力する。それこそが現在の自らの優等性を証明することだと信じていたし、中学受験時や中学時代の自分を超克することであると考えていた。だから合宿中は24時まで教室で自習し、6時に起きては朝食時間まで勉強することを繰り返した。

 その成果が出たのは、11月の進研模試だった。

 

 ベネッセ総合学力テスト 2年生11月記述

     点数  全国偏差値 校内順位

 国語 72/100   70.0    10位

 数学 56/100   61.9    39位

 英語 76/100   72.3    33位

 世史 93/100   78.3    1位

 国数英総合     69.8   16位

 国英歴文系     79.5   1位

 国数英文系     73.3   7位

 4教科文系      76.6   2位

 判定(A=80%以上 B=60%以上 C=40%以上 D=20%以上 E=20%未満)

 東大文科一類Ⅾ 一橋法Ⅽ 早稲田法Ⅾ 千葉法政経B


 11月からは世界史が模試に登場し、高1の秋頃からコツコツやっていた世界史力がここで爆発した。また9月からみすずで国語・数学の受講を開始したことから、国語の成績が安定した。一方で自分のせいでもあるのだが、みすずの数学指導はあまり良いものでは無かった為、ここから数学の成績は低迷することになる。これ以降、自分の点の取り方は『国英歴で圧倒的優位を形成し、数学の穴を埋める』という方針になった。数学が苦手な文系受験生で国公立を目指す場合、基本この戦略になるだろう。

 さて。高2の12月にもなると、気になるのは来年の12月には目と鼻の先にある共通テストだ。僕はその時になるまで、全く共通テストというものを意識した勉強をしてこなかった。とにかく私立や国公立二次を食い破る為の知識や記述力などを磨いてきた。高1の1月に共通テストの問題が新聞に載っていたので世界史だけ解いてみたところ85点だったので、まあこんなもんかと思っていたぐらいだった。そこで東進が毎年やっている共通テスト同日体験受験に申し込んでみることにした。


 2022年度共通テスト同日体験受験(東進) 2年生1月

 英語リーディング94 リスニング70 国語146 数学ⅠA39 数学ⅡB30 世界史B94 化学基礎33 地学基礎28 合計534/800 新高3内偏差値64.4

 判定(A=80%以上 B=65%以上 C=50%以上 D=35%以上 E=35%未満 Z=教科・科目不足)

 一橋法Z(Ⅾ?) 早稲田法A 千葉法政経Z(A?) 一橋社会Z(Ⅾ?) 明治法A 早稲田政治経済共テ利用E


 2022年度共通テストでは数学が大難化し、僕は大惨敗を喫した。また、勉強してないという理由で倫理政治経済を受けなかった為、5教科7科目を要求する国公立大学の判定が出なかった。社会科目ならば勉強していなくても偏差値50を下回ることは無いだろうという見立てがあったので、国公立の判定の横に()で書いてある判定は5教科6科目偏差値で判断した時のものである。一応千葉大はAが取れるぐらいの点数だったが、数学がこの点数だと一橋はかなり厳しいと東進の先生に言われてしまった。以降、共通テストには苦手意識を抱くことになり、特に数学や理科基礎には苦しめられることとなった。最後に、学校で1月に受けた河合全統模試と2月に個人で受けた駿台模試の結果を上げておく。


 全統記述高2模試 2年生1月

     点数  全国偏差値 校内順位

 英語 169/200   71.0    11位

 数学 106/200   56.5    38位

 国語 135/200   73.7    2位

 世界史 79/100   70.2    1位

 国立文系      67.9    1位

 文系全体      71.6    1位

 判定(A=80%以上 B=65% C=50% D=35% E=20%以下)

 一橋法Ⅽ 一橋社会Ⅽ 早稲田法B 千葉法政経A 筑波社会A 明治法A 中央法A


 第3回高2駿台全国模試(記述・ハイレベル) 2年生2月

     点数  全国偏差値 

 英語 56/200   52.6   

 数学 48/200   44.4

 国語 130/200   66.9

 総合 234/600   54.9

 判定(A=合格可能性80%以上 B=60%以上 Ⅽ=40%以上 Ⅾ=40%未満)

 一橋大法学部Ⅾ 一橋社会Ⅽ 早稲田法Ⅽ 千葉法政経A 筑波社会Ⅽ


 この頃から、数学ははっきり苦手科目として認識され始めた。だが国英歴の総合力がそれを打ち消していた為、全体的な成績は良いものだった。駿台模試の英語は相変わらず難しく、中々良い成績を取ることはできなかったが。また、駿台模試の判定で一橋社会の方が一橋法より良かったことから、自分の興味にも合わせて志望校を一橋大学社会学部に確定した。東大は地歴を二科目二次試験で使うということが非常にネックとなって断念することにした。稲毛高校では地理Bの授業が開講されないからだ。共通テストの足切りに引っ掛かる可能性も吟味した上での選択だった。

 そして、高3の4月を迎えた。

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