第33話 続・あれ? もう日常パー(以下略
俺は強制的にいつものスーツスタイルへと着替えさせられていた。
「休みの日まで仕事を思い出させたいのか。お前らは」
ん?
自分で言ってて何だか違和感があるぞ?
「スーツが似合うって結構ポイント高いよ」
「先輩と言えばスーツです」
結局、外へと連れ出されてしまった俺は、しぶしぶ2人についていくことにした。
先頭を行くのはセピアである。
俺とルージュはカルガモの
電車に乗って辿り着いた先は、某巨大商業施設であった。
ここはアパレル関係のみならず、書店やら電気屋やら、普段俺が食べるはずもないリッチなお食事やら、最新スイーツと言った、何から何まで揃うデパートであった。ちなみにゲーセンもあるらしい。
「へー、結構美味しそうなものが売ってんのな」
「食べたい」
ルージュはじゅるりと
「ちょっとちょっと先輩、いきなり食べ物関係のお店じゃないでしょ!」
抗議の声を上げたのはもちろんセピアである。
「まずは先輩の服を見に行きましょう」
「へいへい」
俺も服を買うのはやぶさかではない。
家にあるのはスーツと部屋着くらいのものだ。
これを機に服の1着や2着買っておくのも悪くないと思っている。
つっても俺じゃ無難な服しか選ばんからな。
セピアに何とかしてもらおう。
セピアはこのデパートに何度か来た事があるようで、ずんずんと先を進んでいく。
俺は遅れないように後からついていく。
ルージュはもの珍しいのかキョロキョロしながら歩を進めている。
スマンなルージュ。
ゲーセンしか連れて行ったことがなくて……。
俺は心の中で懺悔した。
エスカレーターで5階まで昇ると、間もなく目的の場所についたようだ。
ああ、ウニクロか。俺でも知ってるアパレルショップだ。
「一体どんなところに連れて行かれるかと思ってたけど、ウニクロか」
「むーウニクロを馬鹿にしてはいけませんよ? 先輩」
「馬鹿にはしてないよ。俺でも知ってる店だなと思っただけ」
「ふふん。天使は大衆量販店がお好きなようね。あたしならお兄ちゃんにもっと高貴な服を選んであげるけどねッ!」
高貴ってなんだよ。
服なんてある程度造りがしっかりしていて機能的なら問題ないやろ?
「高ければいいってものじゃないわ。お手軽な値段でオシャレする醍醐味ってのを見せてあげるわッ!」
セピアはセピアで何やら燃えているようだ。
ここはセピアのコーディネートに任せておこう。
「先輩はスタイルいいんですから、定番の黒スキニーでも似合いますよ」
セピアはズボンのコーナーでいくつか見つくろって俺に手渡す。
なんだろう。試着して来いってことかな?
いちいち試着するのが面倒なんだよなぁ……。
スーツは別だけど。
俺は促されるがままにズボンやジャケットを手渡されて試着室へと向かう。
それから俺の着せ替えショーが始まった。
散々、ファッションショーに付き合わされて、解放されたのはもう何時間も経過した後だった。えらい出費だな。今までこんなに服にお金を使った事などなかったので、なんだかもったいない気がしてならない。
本来なら本か漫画でも買ってるわ。
あーそろそろPCも替え時か?
「もうお昼ですね。何か食べましょうか」
「そうだな」
「ふん。同意ね」
セピアの提案にルージュはツンツンしながらも賛成に回った。
懐かしい感じのツンデレかな?
「何にします?」
「俺の思いはいつも変わらない。カレーとラーメンをひたすら食べていたい」
「お兄ちゃん、カレー脳だからねぇ」
「んだよ、カレー脳ってのは」
「心の声に耳を傾けてみなさい。答えがあるから」
「うーん。聞こえんなぁ……」
「馬鹿言ってないでちゃんと考えてください先輩」
いつまでもこんなやりとりをしているのもアレなので、俺たちはじゃんけんで決めることにした。俺が食べたいのは、かつカレー、ルージュはラーメン、セピアはビュッフェ形式のイタリアンであった。
ビュッフェ!?
ビュビュビュビュッフェ!?
何ぞそれ。
セピアは何だか現代の女の子って感じだな。俺には
説明を聞いても俺は納得がいかない。
バイキングじゃダメなん?
「じゃあ、覚悟はいいか? じゃーんけーん!」
「「「ホイ!」」」
3人の声がハモる。グー、グー、パー。
セピアの勝利だ。
「なんでだよ。男なら最初はグーだろ……」
「何言ってんですか?」
セピアのジト目が俺を捉える。
こうしてセピアの希望通り、イタリアンビュッフェの店に入る事となった。
まぁ、たまには普段食べないものを食べるのもいいだろう。
何事も経験だ。
スパゲッティにピザ、え? パスタ?にピッツァ? リゾットにサラダ、オムライスなどを手当たり次第に自分たちのテーブルに持ってくる。
え? オムライスはイタリアンじゃない?
そんなん知らんわ、俺に言われても。
好きなもん選んで食べればいいんでしょ?
とにかく、俺とルージュの2人のトレイは明らかに健康的でない盛り付けで彩られることとなった。
あ、知らんけどカレーもあるよ!
俺、カレーを見たら詠唱したくなるんだ……。
体はカレーでできている――
俺はこう見えて結構食べる。
ルージュもだ。
セピアはあまりにも多くの料理を取ってくるので心配していたが、問題なく全て食べ終えた。
「もっと雰囲気も楽しみましょうよ」
セピアが残念な人を見るような目をして物申してくるが、食事なんてもんは楽しく食べられればいいのだ。
実際、天使と魔神、そして人間――今は神人だが――と言う、どうしてこうなった感満載の3人にしては楽しく会話しながら料理も楽しむ事が出来たと思う。
もちろん、
その後、適当に店内をぶらついて帰ろうと2人に声をかけると、彼女たちからブーイングが上がった。
なんでも最後にスイーツを堪能したいらしい。
仕方なくカフェを探して入ると、それぞれ好きな物を注文する。
セピアはフルーツとホイップクリームとアイスが満載の巨大パフェ。
ルージュはそれを少し引いたような表情で眺めつつも、バナナやイチゴ、フルーツ盛り沢山な上、チョコ、ホイップクリームなどでデコレーションされたハニトー。
俺はと言うと、以前食べたパンケーキの味が忘れられず今回もそれに決める。
全てのスイーツが出来あがり、3人で雑談しながら食べ始める。
すると、セピアが鬼との戦いについて言及してきた。
まさかセピアから鬼の話題を振ってくるとは思わず少々面喰ったが、セピアの話に大人しく耳を傾ける。
「私、思ったんですけど……先輩にはせっかく
俺は自分に宿る
唯一知っていることと言えば、ヴィオレさんから聞いた神をも殺す
何でも普通に武器を創造するよりも強力であると言う話だ。
まぁ確かに
つーか、そう言うことは速く言って欲しかった。
とは言え、
「でも、前にヴィオレさんが取り出そうとした時、防御フィールドみたいなのが出て取り出せなかったよな?」
「あれは他人が干渉しようとしたからです。自分で武器化するなら問題ないらしいんですよ。現に
確かに下級の鬼にすら苦戦するレベルの俺だが、ルージュに叩き込まれた力の引き出し方や使い方に加えて
やれやれ……。
今日から
ルージュとスイーツの取り合いをしているセピアを微笑ましく眺めながら俺はそう思った。
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