第30話 衝撃の告白が天使たちを襲う!!
ルージュとスカーレットが参戦した後は一方的な戦いとなった。
2人の
どこからともなく、次から次へと湧いてくる鬼であったが、2人によって殲滅されその数を減らしていく。
最初の数よりも増えてるんじゃないか?
離れたところにいるはずのセピアの元にも多くの鬼がいるはずなのだ。
俺がここにいないセピアの事を心配していると、いつの間にか横に来ていたルージュがぶーたれたような声を上げた。
「あ、お兄ちゃん、あの天使のこと考えてるでしょ?」
頭の中を見透かされて面食らった俺だったが素直にそれを認める。
「ん? ああ、セピア1人だからな」
「なによう。助けに来た時くらい感謝してくれたって……」
「ああ、ルージュたちのお陰で助かった。ありがとう」
「んあッ!?」
ルージュは少し間抜けな声を上げて固まった。
俺も助けてくれた相手に冷淡な言葉を投げかけるほど人間堕ちちゃいない。
なんやかんやと世話を焼いてくれるルージュに対して俺は既に好感を抱いていた。
その時、遠くから光り輝く翼を持った天使がこちらへ向かって飛んでくるのが見えた。
1人ではない。
7人ほどいるようだ。
そして凄い速度で接近すると、俺の傍に降り立つ天使たち。
「先輩! 無事でしたか!」
開口一番そう言い放ったセピアは俺に駆け寄ると相好を崩した。
「ああ、ルージュたちに助けられた。俺1人だったら死んでたよ」
セピアはギンッとルージュの方に目を向けたものの文句は言わなかった。
残りの6人の天使は、バーミリオン以外は知らない天使だ。
バーミリオンは手を挙げて「よッ」と俺に一声かけると、スカーレットの方を向いてガンを飛ばし始めた。
「あのーまだ、鬼が残ってるんで後にしてもらってもいいですか?」
セピアが睨みあう2人にそう声をかける。
俺も同感だ。
まだ10体ほどの鬼がこちらの様子を窺っている。
「でも、こんな組織だった動きは初めてですね」
「てか、そちらの天使たちは何者なんだ?」
「バグ殲滅部隊の面々です。近くにいるのが分かったので来てもらいました」
「おしゃべりはそれ位にしたら? 来るわよ」
ルージュが少しイラだったような声で俺とセピアに告げる。
とは言え、天使7人と魔神2人の力の前には鬼が多少増えたところでお話にもならない。鬼たちは10分とかからず、全て黒い塵に変えられてしまった。
鬼がいなくなって俺がホッと胸をなでおろしたのも束の間、今度は天使と
こいつらめんどくせぇ……。
まぁ仕方ないんだろうけどさ。
とにかく終わったんだし早く帰ろうぜ……。
焦れた俺が、口を開きかけるとバグ殲滅部隊の天使たちが何やら話し始めた。
「しかし、こんな大規模な群れが地上に現れるなんて初めてだな」
「ああ、
天使たちが素朴な疑問を口にした時、突如としてスカーレットが笑い出した。
愉快そうに。
「ははッ……お前ら本当に何も知らないんだな……」
「なッ、どういう意味だッ!」
「はぁ……せっかくの機会だ。純真真っ直ぐな天使様に教えてやろう」
スカーレットはひとしきり笑い終えると、腕を組んだまま尊大な態度で話し始めた。
「バグ共は間違いなく、人間、そしてこの阿久聖君の
「舐めるなよ
バグ殲滅部隊の天使の内の1人が大きな声で怒鳴りつける。
「その
「そんなことは我らには関係ない。我々は人間を護ると言う任務を全うするだけだ」
「チッ……そう言うのを思考の放棄だと……まぁいい。……その任務だが、
「何が言いたい……」
天使たちは皆一様に怪訝な表情を作り、口々に
セピアとバーミリオンだけは黙ってスカーレットの話を聞いている。
何か思うところがあるのだろうか?
セピアは
「話を変えよう。バグはその
「舐めるなと言ったはずだ! そんなことは我々だって知っているッ!」
「ではこれはどうだ? その結晶は人間の
「濃縮だと……?」
「生物濃縮と言う言葉を聞いたことくらいはあるだろう?」
スカーレットは小馬鹿にしたような口調で天使たちを煽り続ける。
最初の勢いはどこへやら、天使たちは段々と口数が減っていく。
「心当たりはないか?
「……」
誰も何も答えない。
天使たちからは困惑の色が見え隠れしている。
「お前ら、バグ殲滅部隊や神器回収部隊の他にも部隊があるのは知っているだろう?」
「当たり前だッ!」
「その中に秘密の部隊があってな……。その部隊名を〈
天使たちは初耳なのだろう、お互いに顔を見合わせて何やら言葉を交わしている。
セピアとバーミリオンの表情も
「そいつらは一体何をやっているか知っているか?」
「知る訳がないだろう。それに秘密の組織など聞いたことがない」
「フッ……それはそうだな。知っている訳がないよな」
勿体ぶった話し方を続けるスカーレットに
「貴様ッ……さっきから一体何が言いたいのだッ!」
「そいつらの任務さ」
「任務だと……?」
「そう。とは言ってもお前らと似たようなものだ。回収しているんだよ。高純度の漆黒結晶……そして強い力を持つ黒の心臓をな」
「……?
天使たちはまるで意味が理解できないと言った表情をしている。
バーミリオンはスカーレットを睨みつけると苛立ちの混じった声で言った。
「
「ああ、せっかくの
「勿体ないだと……?」
確か
回収するからには何か使い道があるんだろ。
「私が言いたいのは、
「使い道だと? そんなことは貴様ら
だから解析班が調査を行っているんだろ?
そう思いながら俺は感じていた。
ああ、違うのか、と。
スカーレットは知っているのだ。
本当の使い道を。
天使たちが理解しているのかは分からないが、セピアとバーミリオンはスカーレットが何を言いたいか、薄々気が付いてるみたいだな。
今までと表情が違う。
「まぁ聞け。回収された
「ッ!?」
天使たちに動揺が走る。
明らかに狼狽している者すらいるほどだ。
ようやくスカーレットの言いたいことが見えてきたのだろう。
「回収された
「はぁ!?
「フッ……何故か? お前ら心の準備は出来たか?」
「なんだと……?」
「お前ら心の準備は出来たか?と言っている」
最早、誰も何も答えない。
その沈黙を肯定と捉えたのか、スカーレットはその端整な顔を歪めてその口を開いた。
「では教えてやろう。天使が何故、
「ッ!?」
絶句する天使の面々を置き去りにして、スカーレットはゆっくりと焦らすように言葉を続ける。
彼女もまた喰っているのかも知れない。
天使たちの負の感情を。
「鬼から人間を護る部隊を作った理由はな……人間が
天使が息を飲む音が聞える。
スカーレットが一呼吸置いて再び口を開く。
「理解したか? つまりお前らの
「馬鹿な! そんな馬鹿な話があってたまるか!」
「
「ッ!?」
「人間は神の子などではないッ! 人間は餌、バグは捕食者で、
「黙れ黙れ黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
今まで黙って聞いていたバーミリオンは剣を抜き放つと、スカーレットに飛びかかってその頭上に思い切り振り下ろす。
その一撃を持っていた黒い剣で軽々と受け止め、スカーレットはなおも
「帰って上位の天使にでも聞いてみたらどうだ? 案外、仲間にいれてくれるかも知れないぞ?
スカーレットの天使たちへと向ける視線には、侮蔑と嫌悪の色がありありと浮かび上がっていた。
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