第20話 誰かが迎えてくれるのもいいもんだ

 うちに帰って玄関に入るなりルージュが飛びついてきた。


「おっそーい!」

「遅かったか?」


 外はまだ明るい。

 スマホで時刻を確認すると15時だった。

 まだまだ夕方に差し掛かるところやんけ。


「それでどうなったの?」

「ん? 何が?」


 俺は何となくとぼけて見せたが、ルージュがそれで収まるはずもなく。


神器セイクリッド・アームズ神器セイクリッド・アームズッ!」

「ああ、取り出せなかったみたいだぞ」

「取り出せなかった?」


 ルージュがおうむ返しに聞き返す。


「何でも魂と癒着しているって話だ。残念だったな。お前らも神器セイクリッド・アームズを狙ってたんだろ?」

「え? 違うけど? あたしが目につけたのはお兄ちゃんの黒子力ダルク黒子回路ダークラインだよ。神器セイクリッド・アームズ持ちなんて、この間知ったばかりだし」


 そう言えばそうだった。ルージュが神器セイクリッド・アームズの件を知ったのはつい最近のことだしな。すごい取り乱してたし、あれが演技だったら立派なアクトレスだよ。


「でも、神器セイクリッド・アームズ持ちが仲間になったら助かるんじゃないのか?」

「そうね。確かに強力な神器セイクリッド・アームズを持っていれば心強くはあるけど……求め過ぎるのもよくないと思わない?」


 殊勝なことを言うもんだ。

 俺は思わずフフンと鼻を鳴らした。


「でも今の話によると、お兄ちゃんを魔人化まじんかしたらもれなく神器セイクリッド・アームズがついてくるって訳ね」

「おい……。人をお買い得商品みたいに言うなよ……」


 これどっちがおまけか分かんねぇな。


「えーこれは増々、お兄ちゃんには魔人になってもらわないとねッ!」


 ルージュはニンマリとした表情で小ぶりな胸を大きく張る。


「ふん。ならちょっとは魅力的な提案をしてみるこったな」

「あら? 今なら健気けなげ従妹いとこがついてくるわよ?」

「まだ引っ張るのかよ。その設定……」


 そんな他愛のないやり取りをしながらも、心地良さを感じている自分がいることに気づいたのであった。

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