翌日――。


 定時を告げるチャイムのあと、一時間ほど経つとフロアの灯かりが消えた。

 すぐにふっと灯かりがついて、


「お疲れさま~」


「お疲れさまでした」


「お疲れっした!」


 チームメンバーの恋脳こいのー先輩が帰って、残っているのは千秋と陽太だけとなった。

 岡本もまだ帰っていないが、打ち合わせ中で席にはいないのだ。


「千秋、仕事終わりそう?」


 島の対角線上にいる陽太が大きな声で言った。

 人の少ないフロアに陽太の声はよく響く。他のチームの人たちの視線に千秋は首をすくめて、陽太を睨みつけた。


「だから静かにって言ってるのに……大丈夫、上がれるよ」


 それを聞くなり、陽太はカバンを持って千秋の席に駆け寄ってきた。


「千秋の部屋、寄っていい? じゃがいものチーズガレット作って!」


「って、言って。昨日、泊ってったのは誰だよ」


「お腹いっぱいになったら帰るのだるくなっちゃってさ」


「今日こそは食べたら帰れよ? そろそろ替えのYシャツも足りなくなってきたし」


「え、じゃあ、買って帰らないと!」


「いや、だから帰れよ……」


 真剣な表情で言いながら、フロアの出口へと向かう陽太のあとを追いかけて、千秋はため息をついた。

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